Research Meets Spreadsheet
S&Pのデータが、
Excelの中に直接届く。
S&P Global の調査部門 Kensho が、Microsoft 365 Copilot との連携を拡大した。アナリストは Capital IQ を別途開かなくても、Excel を開いたまま出典付きのデータを引き出せるようになる。
What Happened
別画面を開かず、
Excelの中で完結する
2026年8月12日、S&P Global は公式発表で、傘下の調査プラットフォーム Kensho のデータ基盤を通じて、資本市場データ・決算説明会の書き起こし・非公開企業の財務情報・グローバル証券情報といった S&P Global の主要コンテンツ群を、Microsoft 365 Copilot のワークフローとエージェント機能へ本格的に組み込むと発表した。この連携拡大は、すでに提供されていたエネルギー分野データの Copilot 連携をさらに広げるものだ。
技術面の核は、S&P Global AI Data Portal の「Deterministic Retrieval」——通称 Kensho LLM-ready API——という仕組みにある。Microsoft 365 公式ブログによれば、Copilot in Excel 向けのコネクタと、Copilot Cowork のエージェント体験向けプラグインの双方が用意され、Copilot はこのAPIを介して S&P Global のコンテンツを、出典付き・検証可能な形で参照できるという。
| これまで | 連携拡大後 |
|---|---|
| Capital IQ Pro を別アプリで開いて確認 | Excel内のCopilotから直接クエリ |
| エネルギー分野データのみ連携済み | 資本市場・決算・非公開企業財務・証券情報に拡大 |
| 出典の手作業での貼り付けが必要 | 出典付き・検証可能な形で自動反映 |
| チャット単体での利用が中心 | Copilot Cowork のエージェント体験にも組み込み |
企業を比較する
Excel内のCopilotに企業名を挙げて指示するだけで、Capital IQ相当の財務データを引き出し、複数企業を横並びで比較できる。
決算説明会を読む
決算コールの書き起こしをCopilotが要約・検索し、発言の出典(どの企業のどの回か)付きでExcelに反映する。
Copilot Cowork で自動化する
単発のクエリだけでなく、Copilot Cowork のエージェント体験として、定型的な調査タスクの一部を自動実行できるようになる。
データベースを開く手間が消えると、
アナリストの時間は分析そのものに戻る。
Who It Affects
誰の仕事が、どう変わるか
金融アナリスト
企業調査・ピア比較・競合分析のたびにCapital IQとExcelを往復していた作業が1画面で完結する。出典が自動で付くため、レポート作成時の裏取り作業も減る。
投資部門・経営企画
非公開企業の財務データまで対象に入るため、M&Aのスクリーニングや投資検討の初期リサーチをExcel上で素早く回せるようになる。
Microsoft 365 管理者
S&P Globalのライセンスを持つ組織では、既存のCopilot契約に対してこの新しいコネクタをどう権限設計・展開するかの検討が新たに発生する。
Why Now / Risk
「AIが答える」から
「出典ごと答える」へ
金融分野のAI活用でここ数年ネックになってきたのは、生成AIの回答に対する「本当にその数字は正しいのか」という信頼性の壁だった。S&P GlobalとMicrosoftが強調する「Deterministic Retrieval」は、生成AIに自由に数字を作らせるのではなく、あらかじめライセンスされた一次データを検索・引用する形に限定することで、この壁に対処しようとするアプローチだ。汎用チャットボットが金融データの分野に食い込みにくかった理由の一つがまさにここにあり、データプロバイダー自身がCopilotに直接コネクタを提供する今回の動きは、その攻防の決着点の一つになる。
ただし過度な期待は禁物だ。この連携は S&P Global のライセンス契約者が前提であり、無料でCapital IQ相当のデータが使えるようになるわけではない。既存のS&P Global/Microsoft 365双方の契約・料金体系がどう変わるかは今回の発表だけでは明らかになっておらず、コスト面の確認は個別に必要になる。また「出典付き」であっても、Copilotが提示する要約や比較の解釈自体に誤りが紛れ込む可能性は残る。一次データの正確性と、AIによる要約・加工の正確性は別の問題であり、最終判断は引き続き人間のアナリストが担うべき領域だ。