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Text-to-Music Model

声を極めたAIが、
次は音楽を鳴らし始めた。

音声合成・音声クローンで知られるElevenLabsが、新しい音楽生成モデル「Music v2.5」を投入した。47,885組のブラインドテストで旧モデルを上回り、無料プランでも商用利用できる楽曲を生成できるという。その中身と実務への影響を読み解く。

AI Navigate 編集部·2026.09.14·読了 7分
VOICE — ELEVEN V3 波形として声をとらえるモデル MUSIC — V2.5 旋律・楽器・展開まで生成するモデル
01
Why Now

声のAI企業が、
なぜ音楽に踏み出したのか

ElevenLabsはこれまで音声合成・音声クローン「Eleven v3」で知られてきた。その延長線上に、テキストから曲を作る新モデルを据えた。

ElevenLabsは公式ブログで「Music v2.5、これまでで最高の音楽モデル」と題し、新しい音楽生成モデルを発表した。これまで音声領域に軸足を置いてきた同社にとって、音楽は隣接領域への本格進出にあたる。生成AIによる作曲ではSunoUdioが先行し、主要レコード会社との著作権訴訟を抱えながらもユーザー基盤を広げてきた経緯がある。ElevenLabsはここに、「ライセンス済み音源のみで学習した」ことを明示して参入する。

この立ち位置の違いは軽視できない。権利処理を巡る不確実性が生成AI音楽の商用利用を躊躇させてきた中、法務リスクを抑えた選択肢を提示できれば、企業のマーケティング用途や動画制作の現場での採用障壁は下がる。声と音楽を同じアカウント・同じクレジットプールで扱えるようになる点も、既存のElevenLabsユーザーにとっては実務上の変化になる。

Music v2(旧モデル)Music v2.5(新モデル)
旋律・楽器の表現がやや単調旋律が豊かで、展開にも深みが増加
生成音が機械的に聞こえやすい生演奏に近い楽器の質感
ElevenMusicで選べる一系統ElevenMusicの既定モデルに昇格
商用利用の位置づけが曖昧商用利用を前提に設計

声を型にはめてきたAIが、
今度は音の余白までも埋めにいく。


02
The Evidence

「最高のモデル」の根拠は
4万7885組の比較テスト

同社は主張を数字で裏づけている。同一プロンプトから2つの候補を作り、人手で比較させた結果だ。

旧モデル生成 BLIND どちらのモデルか伏せて聴き比べ v2.5 生成 47,885 ペア比較 で判定
FIG. 同一プロンプトから旧モデルとv2.5それぞれで1曲ずつ生成し、ブラインドで比較する評価フロー
01

同一プロンプトから2曲

同じ指示文から、旧モデルとMusic v2.5それぞれで1曲ずつ生成する。

02

どちらの曲か伏せて比較

評価者にはどちらがどのモデルの生成物か伝えず、47,885組のペアで好みを判定させた。

03

過半数がv2.5を選択

結果、多くのペアでMusic v2.5が選ばれた。特にR&B・ソウル・ヒップホップ・ロック・メタル・オーケストラ・映画音楽のような、ボーカル主体または生楽器主体のジャンルで差が広がった。

03
By The Numbers

比較テストが示す数字

47,885
組のブラインド比較ペア
7
差が広がったジャンルの数
5曲/日
無料プランのロスレスDL上限
400曲/月
Proプランのロスレスダウンロード上限

数字の出どころはElevenLabs公式ブログ同社の料金ページ。ブラインドテストの厳密な勝率までは公開されていないが、「過半数のペアでv2.5が選ばれた」という結果と、ジャンル別の差の傾向は明記されている。無料プランで生成した楽曲も商用利用でき、ElevenMusicへのクレジット表記が条件になる。

04
Who It's For

誰に効いて、誰には物足りないか

ボーカルや生楽器を要するジャンルほど、旧モデルとの体感差は大きいとされる。

ボーカル主体(R&B・ソウル・ヒップホップ)

歌ものの質感差が最も出やすいとされる領域。BGMではなく「聴かせる曲」を作りたい制作者に向く。

生楽器主体(ロック・メタル)

楽器の生々しさが評価軸になるジャンルでも差が確認された。バンドサウンドの下地素材づくりに使える。

大編成(オーケストラ・映画音楽)

展開の深みが問われる長尺の劇伴・映像BGM向け。短いジングルや単純なループ素材が目的なら差は感じにくい。

ElevenLabsの声を扱ってきた代理店や動画制作会社にとっては、声も曲も同じアカウント・同じクレジットプールで完結できる利点がある。一方、単発で音楽生成だけを試したい個人や、すでにSuno・Udioの使い勝手に慣れているユーザーにとっては、乗り換えるほどの決定打とまでは言えない。


05
What To Watch

確認すべきこと、次の一手

次に何をすべきか。商用利用を検討する制作者は、まず無料プランの5曲/日というロスレスDL枠を使い、ボーカル主体・生楽器主体のジャンルで実際の質感を確認するのが手早い。声とのセット運用を検討する既存ElevenLabsユーザーは、ElevenCreativeかAPI経由での統合コストを見積もっておくとよい。

一方でリスクも残る。「ライセンス済み音源のみで学習した」という主張は、Suno・Udioが直面してきた著作権訴訟を踏まえた差別化ポイントだが、第三者機関による独立検証がされたわけではない。47,885組のテストもElevenLabs自身が実施した社内評価であり、厳密な勝率の数字までは公開されていない。無料プランはロスレスDLが1日5曲までに制限されるため、量産用途にはProプラン以上の契約が前提になる点も見落とせない。