Claudeの認証情報が、
狙われはじめている
パスワードも二段階認証も破らず、ログイン済みの「セッション」だけを盗む——そんな手口でClaudeの利用者が標的になっているとTechCrunchが9月8日に報じた。加入者のトークン利用枠が、本人の知らないうちに消費される事例が相次いでいる。
盗まれているのは
パスワードではなく「ログイン済み」の状態
TechCrunchの報道によれば、攻撃者は市販の情報窃取型マルウェア(インフォスティーラー)を使って、利用者のPCからClaudeのログインセッションを盗み出し、そのまま本人になりすまして利用枠を消費している。パスワードを推測したり二段階認証を突破したりする必要はない。ブラウザに残る「すでにログイン済み」という証明——セッションCookie——をそのまま複製し、別の端末で再生するだけで、認証プロセスを丸ごと素通りできてしまう。
被害はSNSやGitHub上で8月ごろから断片的に報告されていたが、英国在住の独立AIコンサルタント、Grant de Swardt氏の事例をTechCrunchが具体的に報じたことで輪郭が明確になった。同氏のClaude Max 20xプランで、8月4日、自分が作業をしていないにもかかわらずトークン利用量が増え続けていることに気づいたという。翌日、Claudeに接続していたツールをすべて無効化し、Cowork(自動タスク)やDispatch(クラウド実行)も停止させたが、それでも利用量は増加を続け、ある観測区間ではde Swardt氏が何も操作していないのに利用率が45%から55%へ上昇したという。
| 従来型の不正アクセス | セッション窃取型 |
|---|---|
| パスワードの推測・漏洩リストの使い回し | ブラウザのセッションCookieをそのまま複製 |
| 二段階認証で大部分を防げる | 認証済み状態を奪うため2FAが機能しない |
| ログイン試行という「痕跡」が残りやすい | 正規ログインに見えるため気づきにくい |
| サービス側の対策が主戦場 | 端末側のマルウェア感染が起点 |
「このマルウェアがClaude自体に起因するもの、あるいはClaudeを使って行ったことに関連するものだとは考えていない」——Anthropicが報道各社に伝えたとされる説明より。
なりすましは、こう成立する
狙われているのは「認証の結果」であって、「認証の手続き」そのものではない。
市販マルウェアへの感染
確認されているのは Vidar・LummaC2・StealC・Redline・Acreed といったWindows向けインフォスティーラーと、少数ながらMac向けのAtomic Stealer。いずれもClaude専用に作られたものではなく、広く出回っている汎用マルウェアが流用されているとみられる。
セッションCookieの窃取
ブラウザが保持する「ログイン済み」を示すCookieがそのまま盗まれる。パスワード自体は盗まれていないケースでも、この一枚があれば認証プロセスを再現する必要がなくなる。
別環境からの再生・消費
攻撃者は盗んだCookieを別の端末やブラウザに読み込ませ、本人になりすましてアカウントへアクセスする。以降の利用は正規ログインと区別がつきにくく、消費されたトークン分の請求だけが利用者に残る。
報じられている数字
下記はTechCrunchが報じたde Swardt氏の事例に基づく数値であり、被害者全体に共通する統計ではない。
Anthropicはこの問題を把握したアカウントについて、強制サインアウト・既存の認可の無効化・保存済み支払い方法の削除・不正利用分の一部返金を実施していると報じられている。もっとも、de Swardt氏自身のケースでは同社からの個別の警告メールは届いておらず、本人も「どこから侵入されたのか特定できない」と述べているという。是正の網羅性には、まだ限界があるとみるべきだろう。
自分ごとにするなら、どこから
影響の受け方は、個人利用・開発者・組織利用で異なる。
個人利用者
他サービスとのパスワード使い回しをやめ、ブラウザに保存した認証情報を定期的に見直す。セッション状態を長期間保持しない設定や、心当たりのない挙動があれば早めのサインアウトが有効。
開発者・エンジニア
CI環境やローカルに置きっぱなしのClaude Code OAuthトークン・APIキーの棚卸しが要る。共有端末や検証用マシンでのセッション保持期間を短くし、異常なトークン消費を検知する仕組みを持つと早期発見しやすい。
企業・組織利用
個人アカウントの寄せ集めではなくSSO経由での利用へ寄せ、監査ログでトークン消費の異常値を継続的に監視する体制が実務的な防御線になる。契約プランの利用枠アラートも合わせて確認したい。
まだ見えていないこと、次の一手
今回の件が示すのは、AIサービス特有の新しい脆弱性というより、従来型のセッション窃取がAIサブスクリプションという「換金しやすい資産」に向かい始めたということだ。盗まれた利用枠は、フィッシング文面の作成やマルウェアの改変などに転用されうるとも指摘されており、単なる迷惑行為では済まない可能性がある。
ただし不確定な点も残る。感染経路が特定できていない被害者がいること、報道されている数値は個別事例であり全体の被害規模が公表されていないこと、そして「返金や警告が全対象者に行き渡っているか」は現時点では検証しようがない。過度な楽観も悲観も禁物で、続報を待つ価値がある論点だ。
当面の推奨アクションは3つ。①端末のマルウェア対策ソフトを最新化し定期スキャンを行う、②Claudeを含む主要サービスで見覚えのないセッション・デバイスがないか定期的に確認する、③組織利用ではSSO移行と監査ログ監視を前倒しで検討する——である。