In-House Inference
コードの地図を描くAIが、
自分のエンジンを積んだ。
コードベースを読み解いて地図化する Windsurf の Codemaps が、これまで一度も公表してこなかった処理速度を初めて明かした。自社開発モデル SWE-1.6 への刷新で、有料プランは最大 950トークン/秒。モノレポやレガシーコードを毎日読み解くエンジニアにとって、待ち時間の質そのものが変わる話だ。
「速さ」を、Windsurf は
ずっと語ってこなかった
Codemaps はコードベース全体をAIが読み解き、階層構造の地図として可視化する機能。だが実務に一番効く数字——処理速度——は、これまでどこにも書かれていなかった。
Windsurf の Codemaps は、リポジトリの呼び出し関係・ファイル間の依存・処理の実行順序をAIが自動でたどり、迷子になりやすい大規模コードの「地図」として提示する機能だ。Cognition 公式ブログによれば、生成時に速度重視の Fast モードと精度重視の Smart モードを選べる設計になっている。
チャット型のAIアシスタントなら、一問一答の応答速度が多少遅くても致命傷にはならない。だが Codemaps がやっているのはリポジトリ全体を舐める処理で、ファイル数が数千〜数万に達するモノレポでは、遅延がそのまま積み重なる。処理速度という数字をベンダーが黙っていたこと自体が、この機能の弱点だった。
コードを読むAIも、結局は
待たせないことがいちばんの機能だ。
Codemaps は、生成のたびに
2つの頭脳から選べる
速さを取るなら自社モデル SWE-1.6、精度を取るなら Claude Sonnet 4.5。用途に応じて切り替える設計だ。
リポジトリを開く
Windsurf 上で対象のリポジトリを選ぶと、Codemaps がファイル構成と依存関係の走査を始める。
Fast か Smart を選ぶ
速度重視なら自社モデル SWE-1.6、精度重視なら Claude Sonnet 4.5。タスクの性質でその都度切り替えられる。
階層マップが出力される
呼び出し関係・ファイル間の依存・処理の実行順序を可視化した地図として、要所ごとにコードへジャンプできる形で提示される。
速いだけでなく、
「回り道」が減った
Cognition の公式発表によれば、SWE-1.6 は速度だけでなく、タスク達成に必要なやり取りの回数そのものを削っている。
Cognition は SWE-1.6 を「free tier: 200トークン/秒」「fast tier: 950トークン/秒」の2段構えで公式発表した。同社の主張で興味深いのは、単純な速度向上だけでなく、以前の Preview 版と同じ SWE-Bench Pro のスコアを約40%少ないやり取り回数で達成できるようになった点だ。学習時に不要に長い試行を抑える「length penalty」を導入し、行き詰まって同じ操作を繰り返す「回り道」を減らしたことが、この改善の技術的な内訳だという。
汎用フロンティアモデルを都度呼び出す方式では、この速さと効率は原理的に出しにくい。専用ハードウェアと専用モデルをセットで自社に抱え込んで初めて、コード解析という「大量のトークンを継続的に処理する」用途に最適化された推論速度が出せる——エージェント型のコーディングツールが軒並み自社モデルへ投資し始めている背景には、この構造がある。
効くのは、誰か
同じ機能でも、日々の使い方次第で恩恵の大きさはまったく違う。
モノレポ運用エンジニア
数千〜数万ファイル規模のモノレポを日常的に解析する層。Codemap の再生成が積み重なるほど、体感待ち時間の短縮は実務に直結する。
レガシーコード保守担当
仕様書が失われた古いコードベースの調査は、探索と地図生成の往復が多い作業。速いモデルほど調査サイクルが短くなる。
個人・軽量開発者
数百ファイル程度の個人プロジェクトなら、生成自体が数秒で終わるためもともと待ち時間は短い。SWE-1.6の恩恵は体感しにくい層だ。
速さと精度、どちらを選ぶか
| Fast(SWE-1.6) | Smart(Claude Sonnet 4.5) |
|---|---|
| 最大950トークン/秒の自社モデル | Anthropic のフロンティアモデル |
| 日常的なモノレポ全体スキャン向け | 複雑なアーキテクチャ解析など精度優先の場面向け |
| Codemap の再生成を何度も回す用途 | 初回の要所把握や込み入った依存関係の読み解き |
次に何が起きるか、
そして見落としてはいけない点
コーディングエージェントやIDE統合ツールが自社の高速モデルを持つ流れは、Windsurf だけの話では終わらないだろう。レイテンシがそのまま体験の質を決める用途——エディタ内蔵のコード解析やリアルタイム補完——では、汎用フロンティアモデルへの都度呼び出しに対して、専用ハードウェアと専用モデルの組み合わせが優位に立ちやすい。モノレポやレガシーコードを日常的に扱うエンジニアは、まず Fast モードで自分のリポジトリの生成時間を実測し、Smart モードとの精度差が許容範囲かどうかを見極めるのがおすすめだ。個人開発の小規模リポジトリでは、そもそも待ち時間が短いため急いで切り替える必要は薄い。
一方で楽観だけの話でもない。SWE-1.6 はあくまで速度に最適化された自社モデルで、Codemaps が Smart モードとして Claude Sonnet 4.5 を今も併存させていること自体が、複雑な設計判断や込み入った依存関係の読み解きでは汎用フロンティアモデルの精度がまだ必要とされている証でもある。速いモデルで生成した地図を鵜呑みにせず、重要な意思決定の前には Smart モードで検算する運用が現実的だろう。加えて、Codemaps は Windsurf という単一ベンダーの機能であり、自社モデルへの依存度が上がるほど、Windsurf をやめた場合に同等の速度が他ツールで再現できるとは限らない点も見ておきたい。