動画AIのRunwayが、
ソフトウェアの中身そのものを生成しはじめた。
Runwayは2026年8月31日、動画生成モデル「Gen-4.5」を土台にした新システム「Solaris」を発表した。画面をコードとして書くのではなく、クリックやドラッグへの反応を1フレームずつリアルタイムに描き続ける——ソフトウェアのインターフェースを、映像のように生成する新しい種類のモデルだ。
ソフトウェアは、なぜ
「コードを経由」しないと動かないのか
これまでAIにソフトウェアの画面を作らせるとは、事実上「AIにコードを書かせる」ことだった。ClaudeやGitHub CopilotのようなコーディングAIは、プロンプトからソースコードを生成し、それをビルド・コンパイルして初めて画面として表示できる。この「コードという中間表現」を経由する構造そのものが、変更のたびに再ビルドが必要になるボトルネックだった。
Runwayが発表したSolarisは、この前提を外す。Runway自身の発表によれば、Solarisは「Interface World Model」と呼ぶ新しい種類のモデルの第一弾で、動画生成モデルGen-4.5を土台に、ユーザーのクリックやドラッグといった操作を入力として受け取りながら、次の画面を1フレームずつそのまま生成する。ソースコードという成果物を経由せず、生成された映像そのものがソフトウェアとして機能するという発想だ。
| コード生成AI | Solaris(Interface World Model) |
|---|---|
| 出力はソースコード | 出力は画面フレーム(映像) |
| ビルド・コンパイルが必須 | 生成した映像をそのまま表示 |
| 変更のたびにコードを書き直す | 操作に応じて次のフレームを直接生成 |
| 例: Claude Opus 5 でコード生成 | Runway Solarisでフレーム生成 |
アプリはもう、コードとしてではなく映像として動く。
操作を見て、次の画面を予測する
Gen-4.5で培った映像生成の技術を、ゲームのような世界モデル「GWM-1」の系譜に接続し、画面そのものに応用した。
ユーザーの操作を入力する
クリック・ドラッグ・スクロールといった操作を、次に何を描くべきかの手がかりとしてモデルに渡す。従来のUIのようにあらかじめ用意された画面遷移を辿るのではない。
次のフレームを直接生成する
Gen-4.5を土台にした単一のモデルが、操作の結果として現れるべき画面を、フレーム単位でそのまま描き出す。コードという中間表現を経由しないため、ビルドの待ち時間が発生しない。
生成された映像がそのままUIになる
結果はプレビュー画像ではなく、操作可能な画面そのもの。ユーザーがまた次の操作をすると、モデルはその続きを予測してさらに次のフレームを生成する。
コード生成AIとの比較評価
Runway自身が実施した比較テストでは、コーディングAIが書いた画面よりSolarisの生成結果が選ばれる場面が多かったと報告されている。
Runwayの発表によれば、テスターによる比較で、Solarisが生成した画面はコーディングAI(Claude Opus 5)が書いたコードによる画面に対して、画面内の挙動の一致度で71%、指示追従の精度で61%の割合で選ばれたという。ただしこれはRunway自身が実施した社内評価であり、第三者による再現検証はまだ行われていない点には留意が必要だ。
誰の仕事のやり方が変わるか
エンジニア
UIの試作にコードを書かず、操作しながらその場で画面案を確認できる。ただし現状は研究プレビューであり、実運用のプロダクトに組み込める段階ではない。
デザイナー
操作感を含めたインタラクティブな試作を、実装を待たずに何パターンも試せる可能性がある。ワイヤーフレームより先の「触れる」段階を早められる。
プロダクトマネージャー
コンセプトの検証サイクルを短縮できる可能性がある一方、公開日も価格も未定のため、現時点でロードマップに組み込むのは時期尚早だ。
「動画を作る会社」から
「コンピューティングを作る会社」へ
Runwayはこれまで一貫して動画生成の会社として語られてきた。今回のSolarisは、動画生成の技術(Gen-4.5)と、ゲーム的な空間を生成する「世界モデル」の系譜(GWM-1)を、ソフトウェアのUIという別領域に転用した点が重要だ。動画生成モデルが培った「次に何が起きるかを予測して描く」能力は、映像だけでなくコンピュータの画面全般に応用できることを示した格好になる。
職種別に見ると、恩恵を受けやすいのはまずデザイナーとプロトタイピングを重視するエンジニアだ。アイデアを操作可能な形にする時間が大きく縮む可能性がある。プロダクトマネージャーにとっては、コンセプト検証の高速化という利点はあるが、意思決定に組み込むにはまだ早い。推奨アクションとしては、Runwayの早期アクセス申請フォームから動向を追いつつ、まずは既存のプロトタイピングフローに手を加えないことだ。
反対視点として押さえておくべき点も多い。第一に、公開されている数値(71%/61%)はRunway自身が実施した評価であり、外部機関による追試ではない。第二に、現状は早期アクセスの研究プレビューであり、一般提供の時期も料金体系も未発表だ。第三に、生成された画面が実際の本番システム(データベースやAPIとの連携、アクセシビリティ対応など)にどこまで耐えられるかは、デモの域を出て検証されるまで分からない。「コードが要らない」は魅力的なキャッチコピーだが、既存のソフトウェア開発が置き換わる段階にはまだ遠い。