「無料」をやめたら、
売上が伸びたという逆説。
Perplexityがインド通信大手Airtelと組んだ無料Pro提供施策は、2025年7月だけで590万ダウンロードという急拡大を生んだ。だが本当に興味深いのは、その無料の窓口が閉じた後——2026年に入ってから、インドでの売上が約60%伸びているという数字だ。
1ヶ月で、上半期全体を
超えるダウンロード数
Perplexityは2025年7月、インド第2位の通信キャリアAirtel(契約者数3.6億)と提携し、通常なら約$200相当の「Perplexity Pro」を12ヶ月間無料で提供する施策を開始した。TechCrunchによれば、この施策が始まった2025年7月だけでインドでのアプリダウンロード数は590万件に達し、前月比+625%、しかもそれ以前の2025年上半期全体のダウンロード数(540万件)を単月で上回った。
施策が新規ユーザー向けに開かれていた7ヶ月間の累計ダウンロード数は5,600万件——直前の7ヶ月間の実に9倍超という規模だった。月間アクティブユーザー(MAU)も7月時点で890万人と倍増し、2025年10月には2,200万人でピークを迎えたという。
無料は、入口であって
ゴールではなかった。
売上が伸びたのは、
「無料の間」ではなかった
直感に反する順序がこの話の核心だ。ダウンロードが爆発したのは無料施策の最中だが、売上が伸びたのは施策が終わった後だった。
Airtelとの新規ユーザー向け無料提供は2026年に入って終了し、それ以降(2026年2月〜8月中旬)のインドでのアプリ内課金・サブスクリプション収益は、無料施策がまだ開いていた時期と比べて約60%増加したとTechBuzzやUnite.AIが報じている。無料期間中に獲得した2,200万人規模のユーザー基盤と利用習慣が土台となり、無料の窓口が閉じたことでかえって有料転換・課金導線が働き始めた、という構図だ。
これは「無料で人を集めてから収益化する」という定番のフリーミアム戦略が、実際に機能した事例として読める。単にユーザー数を稼ぐだけの施策ではなく、後段の収益化までセットで設計されていたことが、今回の数字から逆算できる。通信キャリアという既存の巨大な契約者基盤(Airtelは3.6億契約)に無料で乗ることで、広告費をかけずに認知と初期利用の習慣化を同時に達成できた点も見逃せない。
無料期間と、
その後の対比
| 無料施策 開催中 | 無料施策 終了後 |
|---|---|
| ダウンロード急増(月590万件) | 新規流入ペースは鈍化 |
| MAU 2,200万人でピーク | アプリ内課金・サブスク収益が主戦場に |
| 獲得コストは実質Airtelが負担 | 収益は前期間比+60% |
誰に、どう効くか
マーケティング・グロース担当
通信キャリアとの提携による大規模無料配布→終了後の有料転換、という設計は、新興市場での類似戦略を検討する際の具体的な参考事例になる。
事業責任者
Google検索・Meta AIが強いインド市場で、価格を武器に足場を築く動きとして注目に値する。海外展開を検討する国内AI企業にとっても、参入戦略の一例として参考になる。
日本の一般ユーザー
直接の関係は薄い。ただしPerplexityのグローバルでの勢いを測る材料として、検索AI競争の一断面として押さえておく価値はある。
60%増でも、
絶対額はまだ小さい
増加率だけを見ると華々しいが、インド市場の売上は、Perplexity全体の売上規模から見ればまだ一部分にすぎないと見られる。60%という伸び率は、母数が相対的に小さいからこそ出やすい数字でもあり、この勢いがそのままグローバル収益への大きな寄与に直結するとは限らない。
また、無料期間中に獲得した2,200万人規模のユーザーのうち、実際に有料転換したのがどの程度の割合かは公開情報だけでは分からない。GoogleやMeta AIもインドで無料・低価格の生成AIを展開しており、価格競争が今後さらに激化すれば、今回のような有料転換の勢いが持続する保証はない。この数字は「一つの成功事例」であって、今後も同じペースで伸び続けることを約束するものではない点は踏まえておきたい。