Gemini、見える透かしを
消せる設定を追加
生成した画像・動画・音楽に焼き込まれていた「見える透かし」を、任意でオフにできるトグルがGeminiに加わった。不可視のSynthID電子透かしとC2PAの来歴メタデータはそのまま維持され、出自証明の仕組み自体は変わらない。
なぜ、透かしは
消せなかったのか
出自証明の仕組みは変えず、消せなかったのは「見た目」だけだった。
Googleは2026年5月20日、Geminiの画像・動画・音楽生成に対し、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)準拠のコンテンツクレデンシャルと、Google DeepMind製の電子透かし技術SynthIDを組み合わせた出自証明の仕組みを導入した。以来、生成物の隅には常に小さな半透明ロゴが焼き込まれ、AI生成物であることが一目でわかるようになっていた。この「見えるマーク」はSNSにそのまま投稿しづらいという不満をクリエイターから集めていたが、Googleは悪用防止を理由に長らく必須仕様として維持してきた。
Googleは8月18日、この見えるマークをオン/オフできるトグルをGeminiアプリと gemini.google.com のエクスポート画面に追加したと発表した。オフにしても、画素に埋め込まれた不可視のSynthID信号と、生成モデル・日時などを記録するC2PAのメタデータマニフェストは従来どおり自動で付与される。Google DeepMindでGeminiの生成メディア機能を統括するプロダクトリード、Priya Raghunathan氏は同日の技術ブログで「見えるマークと出自証明はもともと別の役割を持つ。前者を選択制にすることで、クリエイターの実用上の不満と、悪用対策としての来歴追跡を両立させたかった」と説明した。詳細はGIGAZINEの報道と、クリエイターの制作フローへの影響をまとめたTechBuzzの分析記事に詳しい。
生成AIの識別表示は各社ともに規制対応の色合いが強く、EUのAI法や米国の行政令など、生成物へのラベル付けを事実上求める動きが背景にある。Geminiが可視マークを必須運用してきたのもその一環だ。今回の変更は義務そのものを緩めるのではなく、義務を満たす手段を「常時可視」から「常時不可視+選択可視」へ切り替えた点が実質的な違いといえる。
数字で見る変更点
検出精度の数値は、Googleの社内監査チームが8月上旬に生成サンプル約10万件を対象に測定したもので、可視マークの有無にかかわらずSynthIDの検出精度は99.9%で変わらないという。C2PAのメタデータマニフェスト側にも変更はなく、生成モデル名・生成日時・トグルの設定状態そのものまでが署名付きで記録される。
ワークフローはこう変わる
生成する
画像・動画・音楽をこれまで通り生成する。裏側でSynthIDの不可視透かしとC2PAメタデータが自動的に埋め込まれる工程自体は変わらない。
表示を選ぶ
エクスポート画面に追加された新しいトグルで、四隅の可視マークを表示するか非表示にするかをその場で選べる。
書き出す・共有する
SNSやポートフォリオへそのまま投稿できる。来歴情報は不可視のまま同梱されるため、C2PA対応プラットフォームやSynthID検出ツールでは引き続き出所を確認できる。
誰に、どう効くか
デザイナー・マーケター・プロダクト担当で、効き方も注意点も違う。
デザイナー
クライアント提出物やポートフォリオにマークが写り込まなくなる。案件によっては「AI生成である旨をあえて明示したい」場合もあり、その際はオンのまま運用する選択肢が残る。
マーケター
SNS広告やキービジュアルにマークが写り込む懸念がなくなり、そのまま入稿できる案件が増える。クリエイティブレビューのたびに透かしを加工で消す手間も要らなくなる。
プロダクト担当
自社サービスにGemini APIを組み込む場合、Vertex AI・API側の対応は8/25予定のため、それまでは可視マーク付きの出力を前提に設計しておく必要がある。
表示ON/OFFで、何が変わるか
| 表示ON(従来) | 表示OFF(新設定) |
|---|---|
| 画像・動画の四隅に半透明ロゴ | ロゴは表示されない |
| SynthID不可視透かし:付与 | 付与(変わらず) |
| C2PAメタデータ:付与 | 付与(変わらず) |
| SNS投稿時の見た目 | 通常の投稿と区別がつかない |
動画クリエイターのJonas Meyer氏(ベルリン在住、登録者34万人のYouTubeチャンネルを運営)は、TechBuzzの取材にこう答えている。
透かしが消えても、出どころまで消えるわけじゃない。
そこの区別を、みんなもっと理解した方がいい。
次に何をすべきか
懸念もある。可視マークが画面から消えることで、SNS上では「AI生成物だと気づかれにくくなるのではないか」という声も一部で上がっている。C2PAのメタデータは表示側のアプリが対応していなければ確認できず、一般ユーザーが目視だけで真偽を判断する手段は実質的に減る。SynthIDの検出もGoogleの検出ツールを使わない限り一般利用者の目には見えないため、「機械的には追跡できても、人の目には分からなくなる」というギャップは、今回の変更でむしろ広がったとも言える。
実務上の判断としては、次の3点が目安になる。第一に、クライアントワークや報道関連など出所開示が重要な用途では、可視マークをオンのまま使う。第二に、SNS投稿など見た目を優先する用途ではオフにしつつ、投稿文にAI生成である旨を明記する運用を社内ガイドラインに加える。第三に、API・Vertex AI経由でGeminiを組み込むチームは、8/25の展開完了状況を確認したうえで可視マークの扱いを最終決定する、という順序が現実的だ。