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Vertical AI Models

MAI-Code 1.1 Flash、価格でも性能でもDeepSeekに届かず

GitHub Copilot向けの新型コーディングモデル「MAI-Code 1.1 Flash」は、価格を4分の1に引き下げて登場した。だが中国DeepSeekの最新モデルと並べた検証では、価格・ベンチマークの両面で見劣りすると報じられている。6月のBuildで掲げた「安価な専門特化」戦略は、最初の実地比較で早くも試されている。

AI Navigate 編集部2026.08.13読了 7分

OUTPUT PRICE / 1M TOKENS MAI-Code 1.1 Flash $1.20 DeepSeek V4 Flash $0.28 同じ出力量でも、MAIのコストは約4.3倍
FIG. Copilotに提供されるコーディングモデルの出力トークン単価(1Mトークンあたり)
01
The Reversal

「専門特化」の看板が、
最初の比較でつまずいた

8月11日にGitHub Copilotへ展開が始まったMAI-Code 1.1 Flashは、価格を大きく下げた一方で、性能面の評判はついてこなかった。

Microsoft AIの公式発表によれば、GitHub Copilot向けコーディングモデルMAI-Code 1.1 Flashは、旧世代のMAI-Code 1 Flash比で価格を「4分の1」に引き下げ、Copilot CLI経由のTerminal-Bench 2.1で22%、.NET関連タスクで15%の性能改善を主張して、8月11日からCopilotの各面への展開を始めた。

ところがほぼ同時期に、技術メディアThe Decoderが報じたのは異なる論調だった。MAI-Code 1.1 Flashは、中国DeepSeekの「DeepSeek-V4-Flash-0731」と比較すると、価格・コーディング性能の両方で劣後しているという指摘だ。実際に数字を並べると差は明確で、入力トークン価格はMAIが1Mトークンあたり0.20ドル、DeepSeekが0.14ドル。より効くのは出力側で、MAIの1.20ドルに対しDeepSeekは0.28ドルと、約4.3倍の開きがある。

コーディングベンチマークでも明暗が分かれた。SWE-bench Verifiedでは両者とも71.6%で並ぶが、ターミナル操作やマルチステップの修正を含むタスクで評価するTerminal-Benchでは、MAIが54.8%(v2.0)にとどまるのに対し、DeepSeekは82.7%(v2.1)を記録している。評価バージョンの違いはあるものの、27ポイント超の差は無視できない。

MAI-Code 1.1 FlashDeepSeek V4 Flash-0731
入力価格(1Mトークン)$0.20$0.14
出力価格(1Mトークン)$1.20$0.28
SWE-bench Verified 71.6%71.6%(同点)
Terminal-Bench 54.8%(v2.0)82.7%(v2.1)

フロンティア追随より、安価な専門特化を。
6月のBuildで、Microsoftはこの言葉をコーディング戦略の旗印に掲げていた。


02
Under The Hood

安さの理屈は、まだ
DeepSeekに追いついていない

出力トークン単価と、エージェント型タスクのベンチマーク。数字で見ると、開きは「誤差」の域を超えている。

CODING BENCHMARKS 71.6% 71.6% SWE-bench Verified 54.8% 82.7% Terminal-Bench(v2.0 / v2.1) MAI-Code 1.1 Flash DeepSeek V4 Flash-0731
FIG. SWE-bench Verifiedは同点、Terminal-Benchでは評価バージョン差込みでも開きが残る
×4.3
出力価格の差(MAI/DeepSeek)
71.6%
SWE-bench Verifiedは同点
27.9pt
Terminal-Benchの差(v2.0対v2.1)

この比較が意味を持つのは、Microsoftの主張がそもそも「フロンティアモデルを追いかけない」という選択だったからだ。2026年6月2日のBuildでMicrosoftはMAI-Code-1-Flashを含む7つの自社製モデル群を発表し、OpenAIのモデルへのライセンス依存から離れる「長期的な自己完結」への転換を掲げていた。安価・省トークンで実用十分な水準を狙う設計思想自体は妥当だが、その土俵で中国発のオープン系モデルと直接比較されると分が悪い、という構図が今回の報道で露呈した形だ。

とりわけ出力価格の差は軽視できない。自動テスト生成やドキュメント生成のように出力トークン量がかさむタスクほど、1Mトークンあたり1.20ドルと0.28ドルの差はそのまま月額コストに跳ね返る。一方でMicrosoftは、1.1で旧世代比の消費トークン数を25%削減し、ストリーミング速度も25%向上させたと主張しており、単価の比較だけでなく実際に消費されるトークン量まで含めた総コストで見ないと、この価格差は正しく評価できない。

03
For Engineers & PMs

では、Copilotでモデルを
選ぶ人はどうするか

影響が及ぶのは主に、日々コーディングモデルを選ぶエンジニアと、Copilotのライセンス予算を握るPMの2者だ。

01

Copilotでモデルを選ぶエンジニアへ

MAI-Code 1.1 FlashをCopilot内の既定コーディングモデルとして固定しないこと。特にターミナル操作やマルチステップの修正が絡むタスクではTerminal-Benchの差が体感差になりやすいため、DeepSeek系や既存の候補と実タスクでA/Bし、用途ごとに使い分ける運用が現実的だ。

02

Copilotのコスト・ライセンスを管理するPMへ

出力トークン単価の4.3倍差は、チーム規模が大きいほど月額コストに直結する。予算試算はSWE-bench Verifiedのような静的ベンチの同点だけで判断せず、実務に近いエージェント型タスク量とTerminal-Bench系の数字を合わせて見たうえで、モデルの既定設定を決めたい。

04
What's Next

次の焦点は、
この差を次版で埋められるか

Microsoftは1.0から1.1への半年弱で出力価格を4分の1に、Terminal-Bench 2.1のスコアを22%改善しており、改善ペース自体は速い。DeepSeek側も7月31日付けで「V4-Flash-0731」に更新しており、両陣営の追いかけっこはしばらく続くとみられる。当面の実務対応としては、次の3点が現実的だ。

  • Copilot内でMAI-Code 1.1 Flashを既定にせず、タスク種別ごとに他モデルとの併用を試す
  • 出力トークン量が多いワークロード(テスト生成・ドキュメント生成等)では特にコスト比較を行う
  • 次回のモデル更新でTerminal-Benchの差がどこまで縮むかを継続的に確認する

05
The Caveat

ベンチマークの差が、
そのまま実感の差とは限らない

公平を期すなら、ベンチマークのスコア差が実務での体感差にそのまま比例するとは限らない点は押さえておきたい。Terminal-Bench側はMAIがv2.0、DeepSeekがv2.1というバージョン違いでの比較であり、同一条件での再検証が望ましい。またMicrosoftはCopilotの本番ハーネス——ファイル編集・ターミナル連携・マルチステップの実行ループ——に直接チューニングしているため、汎用ベンチマークには表れにくい「Copilot内での使い勝手」の差が別に存在する可能性もある。1.0から1.1へのわずか半年弱での改善速度を踏まえれば、次の更新でこの差が縮む余地は十分に残っている。