European AI Funding
Lovable評価額、133億ドルに倍増
スウェーデン発のバイブコーディング企業 Lovable が新たに4億ドルを調達し、評価額は133億ドルへ。8カ月足らずで評価額が2倍になった背景には、急伸するARRと、欧州発AIスタートアップの資金力を試す動きがある。
The Raise
4億ドル調達、評価額は133億ドルに
Lovable は現地時間8月12日(水)、新たに4億ドルのシリーズCラウンドを完了し、評価額が133億ドルに達したと発表した。ラウンドは Menlo Ventures と、EQT が運用するEUの投資ビークル Scaleup Europe Fund が共同で主導し、ラテンアメリカ・アジアの新規投資家として Tencent Holdings も参加した。詳細はBloombergの報道とTechCrunchの記事で確認できる。
この評価額は、2025年12月18日に確定した前回シリーズB(3億3,000万ドル、評価額66億ドル)から8カ月足らずで約2倍という速度だ。当時のラウンドは CapitalG と Menlo Ventures が主導し、Khosla Ventures・DST Global・EQT Growth・NVentures(NVIDIA)・Salesforce Ventures・Databricks Ventures・Atlassian Ventures・HubSpot Ventures・Accel・Creandum など既存投資家が名を連ねていた。CEO兼共同創業者の Anton Osika は今回の調達について「プロダクト・インフラ・チームへの投資を加速し、Lovable を“ビジネスを構築し運営するための最良の場所”にするための資金だ」とコメントしている。
評価額が2倍になっても、
コードの書き心地は変わらない。
By The Numbers
資金と収益、両方が急伸している
評価額の背後には、Lovable自身が公表してきたARR(年換算収益)の急な右肩上がりがある。
Lovable は2026年6月、ARRが5億ドルに達したと発表している。2月の4億ドルからさらに伸びた計算で、2025年7月時点の1億ドルから1年足らずで5倍という成長曲線を描いてきた。同社は週あたり100万件超の新規プロジェクトが作られていると主張しており、この利用実績の伸びが、今回の評価額改定の説得材料になったとみられる。ただしこれらの数値はいずれも Lovable 自身の発表に基づく自己申告であり、監査済みの財務諸表で裏付けられたものではない点は留意が必要だ。
Competitive Set
「バイブコーディング」の中で、いま一番大きい
133億ドルという数字は、隣接する競合の評価額と並べるとその位置がよくわかる。
| Lovable | 近い時期の競合評価額 |
|---|---|
| $13.3B(2026.08、シリーズC) | Replit $9B(2026.03、シリーズD) |
| ARR $500M(自己申告・26年6月) | Vercel(v0開発元)$9.3B(2025.09、シリーズF) |
| 2024年11月創業・ストックホルム拠点 | 両社とも米国拠点、AIコーディング領域で競合 |
プロンプトから直接アプリを組み上げる「prompt-to-app」領域では、Replit・v0(Vercel)・bolt.new(StackBlitz)が主要な競合として名前が挙がる。評価額だけで見れば、Lovable は今回のラウンドでこの中の最上位に躍り出た形だ。ただし各社のポジショニングは微妙に異なる。Replit はホスティングやデータベースまで含めた「オールインワン」の開発基盤を、v0 は Vercel の AI Cloud インフラと一体化した開発体験を強みにしており、Lovable は非エンジニアでも Supabase 連携の本番アプリを作れる手軽さで支持を広げてきた。評価額の逆転は、この3社が同じ土俵で資金体力を競い合う局面に入ったことを示している。
ビジネス側・PM 側でこの領域のツール選定に関わる読者にとっての実務的な意味は明確だ。資金体力はベンダーロックインのリスクを下げる材料にはなるが、プロダクトの使い勝手や生成コードの品質を保証するものではない。導入評価では、評価額のニュースに引っ張られず、実際のワークフロー(認証・DB連携・デプロイまでの一気通貫度、既存スタックとの統合しやすさ)でPoCを回すのが引き続き王道だ。とはいえ、資金が潤沢なベンダーはロードマップの継続性・サポート体制・エンタープライズ機能の投資余力で優位に立ちやすく、長期契約を検討するチームにとっては「潰れにくさ」のシグナルとして無視できない材料でもある。
Next 90 Days
次に見るべき3つのポイント
評価額のニュースそのものより、その後の動き方を追う方が実務的な示唆は大きい。
プロダクト投資の中身を追う
調達資金が「プロダクト・インフラ・チーム」に向かうと Osika 氏は説明している。次の四半期でエンタープライズ機能(権限管理・監査ログ・SSO等)にどこまで投資が回るかが、個人開発者向けツールから業務ツールへ脱皮できるかの分水嶺になる。
自己申告ARRの検証材料を求める
ARR $500M は Lovable 自身の発表値であり、監査済み財務は非公開。本格導入を検討するチームは、契約継続率やチャーンなど「伸び率」以外の指標を営業担当に確認する価値がある。
Replit・Vercel の対抗策を注視
評価額の逆転は競合の値下げ・機能強化・追加調達を誘発しやすい。次の1〜2四半期でこの3社の価格改定や新機能発表が相次ぐ可能性が高く、ツール選定を急がない企業はこの動きを待つ選択肢もある。
Frontier
評価額は、地図ではない
今回のラウンドは単発の出来事ではなく、一連の流れの延長線上にある。Lovable は7月末にも、清算手続きに入っていたスウェーデンのAIエージェント企業 Nalvin(旧 Version Lens)の創業チーム3名(Pontus Gifvas・Fredrik Stockman・Pascal Chatterjee)をアクイハイア形式で獲得しており、これは同社にとって創業以来4件目の技術系創業チーム獲得だった。資金調達と人材獲得を交互に重ねながら規模を拡大するこのパターンは、欧州発のAIスタートアップが米国勢と伍する体力をつけつつある一つの実例として読める。
とはいえ、評価額の急伸を額面通りの成功指標として受け取るのは早計だ。AIコーディングツール全体が資金市場で過熱気味だという指摘は根強く、ARRの自己申告値・チャーン非公開・生成コードの品質担保など、投資家向けの説明と実際のプロダクト評価は別軸で検証する必要がある。評価額は「今この会社にいくら賭ける投資家がいるか」の指標であって、「このツールが自分のチームに合うか」の答えにはならない。バイブコーディングツールを選ぶ立場の読者にとって、今回のニュースが教えてくれるのは資金体力という一つの変数にすぎない——その先は、自分たちのワークフローで試してみるしかない。