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Google DeepMind

Geminiの舵、握り直す。
ハサビス氏、CEOを退く

AI開発を率いてきたデミス・ハサビス氏がGoogle DeepMindのCEOを退任し、会長(Chairman)へ。後任は現CTOのコーレイ・カヴクチュオール氏。フロンティア争いで足踏みするGeminiの立て直しに向け、Googleは指揮系統そのものを組み替えた。

AI Navigate 編集部2026.08.10読了 7分

BEFORE CEO:ハサビス氏 Gemini / Isomorphic Labs AFTER Chairman:ハサビス氏 SVP:カヴクチュオール氏 (Gemini開発統括) CEOピチャイ氏に直属
01

The Shake-up

後退ではなく、
体制の組み替えだった

8月5日、Axiosが体制刷新を速報した。

米国時間8月5日、経済メディアAxiosが、Google DeepMindのCEOを務めてきたデミス・ハサビス氏がその職を退くと報じた。ハサビス氏は今後、DeepMindの会長(Chairman)を務めるとともに、親会社Alphabetの「チーフサイエンティスト」を新たに兼務する。これまで通りAI創薬子会社Isomorphic Labsのリーダーも継続する。TIMEの追加報道によれば、日々の意思決定は現CTOのコーレイ・カヴクチュオール氏が引き継ぎ、同氏はSVP(上級副社長)としてGoogle DeepMindを率い、Google/Alphabet CEOのサンダー・ピチャイ氏に直接報告する体制になるという。

背景にあるのは、Gemini開発そのものへの焦りだ。Fortuneの報道は、Geminiが度重なる延期に見舞われ、フロンティア性能でOpenAIやAnthropicに後れを取ってきたことが今回の刷新の引き金になったと伝えている。単発の人事ではない。6月20日にはAlphaFoldでノーベル賞を共同受賞したジョン・ジャンパー氏がAnthropicへ移籍し、7月30日にはAlphaFoldチーム自体が解散していた。今回のCEO交代は、その延長線上にある研究組織の立て直しの総仕上げと見るのが実態に近い。

刷新前刷新後
CEO:デミス・ハサビス氏Chairman 兼 Alphabetチーフサイエンティスト:ハサビス氏
CTO:コーレイ・カヴクチュオール氏SVP(Gemini開発統括・ピチャイ氏直属):カヴクチュオール氏
チーフサイエンティスト:ジェフ・ディーン氏退社し新会社を設立(Googleが出資)
AlphaFoldチーム7月30日付で解散済み

02

By the Numbers

数字で見る、今回の刷新

8/5
Axiosが体制刷新を速報
3人
今年に入り交代・離脱した主要幹部
Chairman
ハサビス氏の新肩書
03

Timeline

半年で積み上がった離脱と再編

今回の刷新は突発的な決定ではなく、6月から続く流れの延長線上にある。

6/20 Jumper氏 Anthropicへ 7/30 AlphaFoldチーム解散 8/5 体制刷新を発表 8/6- 続報・Dean氏退社判明
FIG. 6月から8月にかけて積み上がった離脱・再編の動き
1

6/20 ジャンパー氏が移籍

AlphaFoldで共同ノーベル賞を受賞したジョン・ジャンパー氏がAnthropicへ移籍。DeepMind発の基礎研究チームから初めての大型離脱だった。

2

7/30 AlphaFoldチーム解散

科学AIの象徴だったAlphaFoldチームが解散。研究体制の再編が水面下で進んでいたことが後にわかる。

3

8/5 体制刷新を発表

Axiosが速報。ハサビス氏がCEOを退きChairmanへ、カヴクチュオール氏がSVPとしてGemini開発を統括する新体制が明らかになった。

4

8/6以降 続報が相次ぐ

TIMEやFortuneが詳細を報道。チーフサイエンティストのジェフ・ディーン氏の退社と新会社設立(Googleが出資)も明らかになった。


経営陣が入れ替わっても、Geminiの開発が止まるわけではない
問われるのは、次の一手の速さだ。


04

Why It Matters

なぜ、これが業界にとって重要か

単なる人事異動ではなく、Geminiの意思決定構造そのものが変わる。

これは一エンジニアの異動ではない。Geminiを検索やWorkspaceに統合する設計判断を握ってきた最高責任者が交代するという、意思決定の「型」そのものの変化だ。Gemini自体の開発が止まるわけではないが、今後のリリース判断や優先順位づけを誰が担うのかは、しばらく外部から見えにくくなる。とりわけGeminiは検索・Workspace・Android という複数事業に横串で組み込まれているため、統括者の交代は一プロダクトの話にとどまらない。

開発者は

Gemini APIやVertex AI連携を組み込んでいるなら、当面はロードマップ遅延のリスクを織り込んで計画するのが無難。カヴクチュオール体制での最初の主要発表を待ちたい。

PM・プロダクト責任者は

ベンダー選定のリスク評価表に体制変更を記録し、代替モデルへの切替コストを再点検しておくとよい。

経営層は

Google側の協業窓口が変わる可能性がある。既存の連携案件は、担当者変更の有無を早めに確認しておきたい。

05

What's Next

次に何が起き、何を見ておくべきか

短期的に見るべき点は3つある。第一に、カヴクチュオール氏体制下での最初のGeminiモデル発表。第二に、ジェフ・ディーン氏が設立する新会社の詳細(Googleがどの程度出資し、どんな役割分担になるか)。第三に、Isomorphic Labsを含むハサビス氏の今後の関与範囲だ。推奨アクションとしては、①Gemini依存度の高い機能のリリース計画に数週間のバッファを持たせる、②カヴクチュオール体制の発表を待ってから大型の統合判断をする、③既存の協業・契約担当者に変更がないか直接確認する、の3点が現実的だろう。

一方で、悲観一辺倒に読むのも早計だ。ハサビス氏はChairmanとして残り、Isomorphic Labsの創薬研究も継続する。研究の第一線から実務のマネジメントを外れることで、むしろ基礎研究に集中できるという見方もできる。カヴクチュオール氏は長年DeepMindのCTOを務めてきた技術者であり、外部からの畑違いの起用ではない。今回の再編を「Geminiの終わりの始まり」と読むのは、現時点の材料からはやや踏み込みすぎだろう。実際にペースが落ちるかどうかは、次の主要モデル発表を見るまで判断を保留するのが賢明だ。