生成AIを使わない転職者に、
年収1000万円は遠くなる。
マイナビ転職が2026年7月30日に発表した最新調査で、転職者の生成AI活用率は46.7%。ところが年収1000万円以上の層に絞ると、その数字は90.7%まで跳ね上がる。「使えるかどうか」が、いつの間にか年収を分ける線になっていた。
「使えるだけ」の時代が、数字で終わった
マイナビ転職「転職者の生成AI活用に関する実態調査」が示した格差
マイナビ転職は2026年7月30日、直近1年以内に転職した正社員700名を対象にした「転職者の生成AI活用に関する実態調査」を発表した(調査期間は2026年4月7日〜10日、WEBアンケート形式)。Innovatopiaの報道と日本人材ニュースONLINEの報道によれば、転職活動で生成AIを活用したと答えた人は全体の46.7%。年代別では20代53.7%、30代61.7%、40代・50代は約3割にとどまる。
ここまでなら「若い世代ほどAIを使う」という、驚きの薄い話で終わっていた。だが同じ調査を年収別に切り直すと、様相が変わる。年収1000万円以上の回答者(43名)に限ると、生成AI活用率は90.7%に達していた。20代・30代という「若さ」の軸よりも、「年収1000万円」という成果の軸のほうが、活用率との相関が強く出ている格好だ。
AI Navigateの調査記事「AIネイティブ転職市場:求人・年収・面接対策」でも触れたとおり、2026年の転職市場ではすでに「AIを使える」という自己申告は差別化にならなくなっている。今回のマイナビ調査は、その「使えるだけでは足りない」という定性的な実感に、初めて具体的な数字を与えたものと言える。
46.7%と90.7%——ふたつの数字の距離
活用者327名に用途を聞くと、最も多いのは「メール・チャットの文面作成」48.6%、次いで「資料作成」38.2%、「情報収集・要約」37.0%だった。一方、生成AIの活用経験がある389名にメリットを尋ねた設問では、「発想の幅が広がった」62.2%、「精神的なゆとりが増した」62.0%、「業務効率が上がった」60.4%が上位を占めている。単なる時短ツールではなく、思考の補助として使われている実態がうかがえる。
誰に、どう効くか
職種によって「効き方」は同じではない
この数字がそのまま刺さる読者と、まだ距離がある読者がいる。エンジニア・ML Ops職は、すでに「AIツールを使えるか」ではなく「RAGやエージェントを本番運用に組み込んだ経験を語れるか」が選考の分かれ目になっており、この調査の90.7%というライン以前から実務レベルで同じ現象が進んでいた層だ。事業側・PM職にとっては、資料作成や情報収集での活用実績を面接で数値化して語れるかどうかが、今回初めて「マイナビ調査」という第三者データの裏付けを得たことになる。逆に転職活動を控えていない在職者にとっては、年収と直接連動する変化ではないため、緊急度は一段低い。ただし社内評価や次の異動先選定で同種の物差しが使われ始めている企業も増えており、無関係とは言い切れない。
| 転職者全体(n=700) | 年収1000万円以上(n=43) |
|---|---|
| 生成AI活用率 46.7% | 生成AI活用率 90.7% |
| 20代53.7%・30代61.7%が中心 | 年代よりも年収の軸で活用率が跳ねる |
| 用途は文面作成・資料作成が中心 | 用途の内訳は本調査では非公表 |
「AIが使えます」は、もう武器にならない。
武器になるのは、使って何を変えたかを語れることだ。
今週から動くなら、この3つ
数字を「自分ごと」に変える具体的な一手
使った「成果」を棚卸しする
資料作成・情報収集・文面作成など、生成AIをどこに使い、何の時間がどれだけ縮んだかを数字で書き出す。「使える」ではなく「〇時間かかっていた作業を〇分にした」の粒度が、履歴書・職務経歴書での説得力になる。
面接で語れる1エピソードを作る
マイナビの調査でも上位に挙がった「発想の幅が広がった」「業務効率が上がった」を、抽象論ではなく1つの具体的な業務エピソードに落とし込んでおく。数値化できる成果(工数削減率、対応件数の増加など)があれば理想的。
年収レンジと自分の活用度を照らす
年収1000万円以上の層で活用率90.7%という数字は、あくまで相関であって、AIを使えば自動的に年収が上がるわけではない。ただし同水準の年収帯を狙うなら、周囲の9割が前提にしているスキルを自分だけ欠いている状態は避けたい。
この数字を鵜呑みにしない
注意しておきたい点もある。第一に、これは相関関係であって因果関係の証明ではない。年収1000万円を得るような層はもともとITリテラシーや情報感度が高く、生成AIも「使いこなせるから使っている」だけかもしれない。「生成AIを使えば年収1000万円に届く」と読み替えるのは飛躍が過ぎる。
第二に、調査対象は直近1年以内に転職した正社員700名、うち年収1000万円以上はわずか43名というサンプルサイズの小ささにも注意が要る。43名という母数での90.7%は、実数にすればおよそ39名前後に相当し、多国籍調査や業界横断の大規模調査ほどの頑健性は期待できない。第三に、活用の「質」は数値化されていない。文面作成や情報収集に留まる利用と、RAGやエージェントを本番運用に組み込むような利用とでは、同じ「活用している」でも市場価値への効き方はまったく違う。数字が示すのは傾向であって、AI活用の中身を問わない免罪符ではない。