共有:

Digital Services Act

ChatGPT、EUで規制対象級

Bloombergが7月29日に報じたところによると、欧州委員会はChatGPTの検索機能を、EUのデジタルサービス法(DSA)における最も厳しい監督区分のひとつ「超大規模オンライン検索エンジン(VLOSE)」に指定する方向で調整しており、早ければ8月にも公式発表される見通しだ。Robloxも同時に「超大規模オンラインプラットフォーム(VLOP)」に指定される見込みという。

AI Navigate 編集部2026.07.31読了 7分

2026.1.15 Metaが競合AIを WhatsAppで遮断 2026.6.9 EUが暫定命令で 開放を強制 2026.7.13 ChatGPTが WhatsApp復帰 2026.8(見込み) VLOSE指定 (未確定)
01
Why Now

「特別扱い」の終わり

EUは生成AIアシスタントを、検索・SNSの巨人と同じ土俵で監督し始めている

Bloombergが2026年7月29日に報じ、7月30日に更新した記事によれば、欧州委員会はChatGPTの検索機能をDSAの「超大規模オンライン検索エンジン(VLOSE)」に指定する方向で最終調整に入っている。Bloombergの報道では早ければ8月にも正式決定される見通しとされるが、2026年7月31日現在、欧州委員会からの公式発表はまだ出ておらず、あくまで「見込み」段階だ。

この動きは単発ではない。EUは、Metaが2026年1月15日からWhatsApp上でChatGPT・Copilot・Perplexityなど競合AIアシスタントの利用をブロックしていた問題を受け、6月9日に暫定命令を出してMetaに門戸開放を強制した。The Decoderの報道によれば、これを受けてChatGPTは7月13日にEU域内のWhatsAppへ復帰している。そこからわずか1ヶ月半で、今度はDSA最厳格区分への指定が報じられた——EUがAIアシスタントを「新しい特別カテゴリ」として扱うのではなく、既存のビッグテック規制の枠組みへそのまま組み込もうとしている流れが見える。

02
The Numbers

「45M」は利用者数ではない

しきい値と実数を混同すると、規模感を大きく見誤る

45M しきい値 45M DSA指定の 法定しきい値 120M+ ChatGPT全体の EU月間利用者 159M 検索機能の EU月間利用者
FIG. 45Mはしきい値、120M+と159Mは報じられているChatGPTの実際のEU月間利用者数
45M
DSA指定の法定しきい値(月間EU利用者・平均)
120M+
ChatGPT全体のEU月間利用者(OpenAI開示・2025年9月までの6ヶ月平均)
159M
検索機能のEU月間利用者(直近報道値)
6%
違反時の制裁金上限(世界売上高比)

誤解しやすいが、「45M」はChatGPTの利用者数ではなく、DSAがVLOP/VLOSE指定を発動する法定しきい値(EU域内の月間平均利用者数4,500万人)にすぎない。ChatGPTの実際のEU利用者数はこれをはるかに上回り、OpenAI自身の開示(2025年9月までの6ヶ月平均)で1億2,000万人超、heise onlineが伝えるBloombergの直近報道では検索機能単体で約1億5,900万人に達しているとされる。しきい値の3倍以上という規模だ。

03
Two Tiers, Same Rigor

ChatGPTはVLOSE、RobloxはVLOP

同じ「最厳格区分」でも、指定される制度上の名称は異なる

今回の指定でもう一点見落とされがちなのが区分の違いだ。Bloombergの報道では、ChatGPTの検索機能は「超大規模オンライン検索エンジン(VLOSE)」として指定される見通しである一方、EU域内で月間約4,800万人の利用者を持つとされるRobloxは、45Mのしきい値により近い水準にあり、「超大規模オンラインプラットフォーム(VLOP)」に指定される見込みだ。両者は名称もDSA上の区分も異なるが、課される義務の水準はほぼ同等——DSAが定める「最厳格監督ティア(VLOP/VLOSE)」というくくりで理解するのが実務上は正確で、単純に「ChatGPTはVLOP」と呼ぶのは誤りになる。

ChatGPT(検索機能)Roblox
想定区分:VLOSE(超大規模オンライン検索エンジン)想定区分:VLOP(超大規模オンラインプラットフォーム)
EU月間利用者(報道値):約1億5,900万人EU月間利用者(報道値):約4,800万人
45Mしきい値との関係:大幅に上回る45Mしきい値との関係:しきい値に近い水準
指定時期:早ければ2026年8月(見込み)指定時期:早ければ2026年8月(見込み・同時発表想定)
04
Who's Affected

誰に、どう効くか

一般ユーザーの体感はほぼ変わらない。効くのは運用側だ

EU域内で運用するチーム

正式指定から4ヶ月の遵守期限内に、システミックリスク評価・独立監査・透明性レポートなどへの対応体制を整える必要が生じる。コンプライアンス予算の確保を今のうちから検討したい。

一般ユーザー

指定は主にバックエンドの監督義務であり、日々のChatGPT利用体験がすぐに変わるわけではない。機能変更というより、運営者側の説明責任・監査対応が増える話だと捉えてよい。

規制動向をウォッチする立場

WhatsApp相互運用命令(6月)から今回のVLOSE/VLOP指定(8月見込み)へ続く流れは、EUがAIアシスタントを継続的に監督対象へ組み込んでいくシグナルとして注視する価値がある。


05
What's Next

次に何が起きるか

01

8月の正式指定を待つ

欧州委員会からの公式発表は「早ければ8月」と報じられているが、時期・範囲とも確定していない。正式なプレスリリースが出るまでは「見込み」の段階にとどまる。

02

指定後の4ヶ月カウントダウンを把握する

正式に指定されると、システミックリスク評価・独立監査・透明性レポートなど一連の義務に4ヶ月以内で対応する必要がある。指定日を起点にスケジュールを引いておきたい。

03

EU域内でChatGPTに業務依存する企業は準備を始める

監督窓口の指定、利用規約の見直し、監督手数料の予算化など、指定が確定してから動くのでは遅い項目から着手するのが現実的だ。

まだ、決定ではない。
これは予定された未来への布石だ。


06
Caveats

まだ「決定」ではない

現時点でこれはBloombergによる調査報道であり、欧州委員会の公式発表ではない。指定の時期がずれ込む、あるいは対象範囲が報道時点と変わる可能性は残る。加えて、VLOP/VLOSE指定に伴うコンプライアンスコストは、EU域内に限って新機能のロールアウト速度や製品開発の優先順位に間接的な影響を与えうるという、これまであまり語られてこなかったトレードオフも存在する。監査対応や透明性レポート作成にリソースを割く分だけ、他の開発に回せる余力は目減りする——規制の実効性と、AIアシスタントの進化速度のバランスは、今後の観察ポイントになる。