Google / Gemini 4
Pichai氏、「Geminiの次の飛躍はもっと大きな基盤モデル」次第と明言
2026年7月22日のAlphabet決算説明会。Google CEOのSundar Pichai氏は、次世代Geminiの鍵は「はるかに大きな基盤モデル」だと語った。Gemini 3.6 Flash投入のわずか1日後に出た、この言葉の重みを読み解く。
Why It Matters
「次の飛躍には、もっと大きな基盤モデルが要る」
5月のGemini 3.5、わずか1日前のGemini 3.6 Flash投入。畳みかけるような発表の直後に出た、トップ自身の言葉だった。
2026年7月22日、Alphabetの第2四半期決算説明会で、Google CEOのSundar Pichai氏は「Geminiの次の飛躍には、はるかに大きな基盤モデルを構築する必要がある」と述べた。THE DECODERの報道によれば、同氏は続けて「Gemini 4に向けて、これまでで最も野心的な事前学習(pretraining)を開始した。フロンティアで見えている進捗に胸が高鳴っている」と語ったという。
このタイミングは偶然ではない。決算発表のわずか1日前、7月21日にGoogleは新モデルのGemini 3.6 FlashとGemini 3.5 Flash-Liteを投入したばかりだった。9to5Googleの報道によれば、3.6 Flashは入力100万トークンあたり1.50ドル・出力7.50ドルという価格で、Artificial Analysis Indexの出力トークン数は前モデル比で約17%少なくて済む効率化を果たしている。それでもPichai氏があえて強調したのは「効率」ではなく「規模」だった——そのギャップにこそ、この発言のニュース性がある。
「モデルを大きくすれば性能が伸びる」というスケーリング則(scaling law)を巡っては、2025年後半から業界で意見が割れてきた。OpenAIやAnthropicの一部研究者は推論時計算(test-time compute)や強化学習によるポスト学習の比重を高め、「事前学習の大規模化だけでは頭打ちになりつつある」という見立てを示してきた。そうした空気の中で、業界最大手の一角であるGoogleのトップ自らが「次の飛躍には、なお大きな基盤モデルが要る」と明言したことは、スケーリング則を巡る論争に対する事実上の反論であり、業界の風向きを占う材料になる。
Follow the Money
「大きな基盤モデル」には、大きな金額がついてくる
同じ決算説明会で開示された数字は、Pichai氏の言葉に重みを与える。
Googleは通期の設備投資見通しを$180億〜190億ドルから$195億〜205億ドルへ引き上げた。四半期の設備投資は$44.9Bと過去最高を更新し、前年同期からほぼ倍増している。「もっと大きな基盤モデル」という言葉は、そのまま「もっと大きな計算資源とコスト」を意味する。スケーリング勝負は技術論であると同時に、株主への説明責任を伴う資金配分の勝負でもある。
Who It Affects
読者タイプ別に見る、この発言の意味
同じ一言でも、立場によって受け止め方は変わる。
事業担当者(Business)
次期Gemini 4がいつ出るかは読みにくい状況が続く。今契約しているGeminiや他社APIを慌てて乗り換える理由にはならないが、大型契約の更新時期をGemini 4の投入時期と照らして交渉材料にする価値はある。
プロダクトマネージャー(PM)
Flash系(3.6 Flash / 3.5 Flash-Lite)は既に使える。当面は「軽量モデルで機能を作り、Gemini 4で刷新する」二段構えが現実的。Pichai氏は将来的にほぼ月次に近いペースでの投入を示唆しており、頻繁な切り替えを前提にした評価体制が要る。
エンジニア(Engineer)
Googleはコーディング・エージェント能力の遅れを自ら認めている。Pichai氏は「フロンティアにある領域は多いが、コーディングとエージェント的コーディングは改善が必要な領域の一つ」と述べた。Gemini 3.5 Proは当初6月予定から7月17日目標にずれ込み、決算時点でもなお未リリースだった。コーディング用途は他社モデルとの併用を前提に設計しておくのが無難。
What's Next
この先、何を見ておくべきか
Gemini 4の投入時期
リリース日は未確定。Pichai氏は「月次に近いペース」での投入を示唆しつつ、事前学習が「最も野心的」と述べるにとどまり、具体的な公開時期には言及していない。
Gemini 3.5 Proの動向
コーディング性能の作り直しにより延期が続いている。次に出るのがGemini 3.5 ProかGemini 4かで、Googleのロードマップの実態が透けて見える。
推奨アクション
①大型モデル切り替えの意思決定は急がず様子見。②Flash系の効率改善分は先取りして使う。③コーディング用途は複数モデル運用を前提に設計する。
The Other Side
楽観だけでは語れない
「大きくすれば勝てる」という賭けには、反対意見も根強い。
大規模化一本足打法にはリスクも指摘されている。まずコスト。設備投資が$195億〜205億ドルに膨らむ中、投資家からは「その資金が本当にリターンを生むのか」という声が強まっている。次にアプローチの分岐。OpenAIやAnthropicの一部、あるいはDeepSeekのような競合は、事前学習の規模拡大よりも推論時計算・強化学習・データ品質の改善に軸足を移す動きを見せており、「大きいことは良いことだ」が唯一解とは限らない。Gemini 3.5 Proの度重なる延期そのものが、規模だけでは解決しない課題(コーディング精度など)があることの裏返しでもある。
| 規模で攻める(Google・一部大手) | 別軸で攻める(推論時計算・効率化) |
|---|---|
| 事前学習の基盤モデルを巨大化 | 強化学習・推論時計算への投資を優先 |
| 設備投資を$195–205Bへ増額 | より少ない計算で同等性能をねらう |
| 月次に近いペースでモデル投入 | 特化型・軽量モデルで差別化 |
「Gemini 4に向けて、これまでで最も野心的な事前学習を開始した」——Sundar Pichai氏
Bottom Line
「言葉」ではなく「金額」で見る
Pichai氏の発言は、一見すると「次のモデルは凄い」というよくある予告に聞こえる。しかし同じ日に開示された設備投資ガイダンスの上方修正と重ねて読むと、これは技術的な意思表明であると同時に、株主に対する「まだ規模で戦う」という経営判断の説明でもある。5月のGemini 3.5 Flash、7月21日の3.6 Flashという立て続けの投入から間を置かず、7月22日にこの発言が出てきたこと自体が、Googleの手の内を示している——次の勝負は、まだモデルサイズで決まる、という賭けだ。決算の詳細な数字はCNBCの決算特集記事でも確認できる。