Few-shot と Chain-of-Thought:推論精度を上げる

AI Navigate Original / 2026/4/27

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要点

  • Few-shot:3-5 例で同じ調子に回答させる
  • 例選びが肝:多様性・境界例・同形式・順序
  • CoT:段階的に考えさせ推論/計算精度を上げる
  • Reasoning モデルは自動 CoT、Few-shot は形式/トーン固定に有効

Few-shot(フューショット)と Chain-of-Thought(チェーン・オブ・ソート、思考の連鎖)は、追加学習なしで AI の回答精度を引き上げる二大プロンプト技法です。前者は「お手本を見せて出力の型をそろえる」、後者は「途中の考えを書かせて筋道立った答えを引き出す」もの。どちらも「指示の書き方」だけで効くので、コストもほぼかからず、今日からすぐ試せます。

Few-shot 例を並べて「型」を示す Chain-of-Thought 途中の考えを書かせる

FIG.1 Few-shot は「出力の型」を、CoT は「推論の筋道」を整える

01Few-shot:お手本で「型」を固定する

Few-shot プロンプティングは、本番の質問の前に「こう聞かれたら、こう答える」という例を数個並べる技法です。例を 0 個で頼むのが Zero-shot、1 個が One-shot、数個まとめて見せるのが Few-shot と呼び分けます。モデルは並べられた例から「期待されている答え方」を読み取り、同じ調子で続きを返します。

たとえばレビューの感情分類なら、次のように書きます。

以下のレビューを「ポジ/ネガ/ニュートラル」で分類:

レビュー: 「待ち時間が長くて疲れた」
分類: ネガ

レビュー: 「料理は美味しかったが値段は微妙」
分類: ニュートラル

レビュー: 「店員さんが親切で居心地良かった」
分類: ポジ

レビュー: 「[判定したいレビュー]」
分類:

ポイントは、最後の行を「分類:」で止めて、モデルに続きを書かせること。例と同じ形式(ラベルだけ)で答えが返りやすくなります。

02例の選び方が成果を左右する

Few-shot は「とにかく例を入れれば良い」わけではありません。どんな例を、いくつ、どの順で入れるかで精度が変わります。次の 4 点を意識すると外しにくくなります。

  • 多様性:似た例ばかり並べない。違うパターン(言い回し・長さ・難易度)を混ぜる。
  • 境界例:判断が割れそうな中間ケースを 1 つ入れると、迷ったときの基準を伝えられる。
  • 同じフォーマット:例の出力形式と、本番で欲しい形式を完全にそろえる。ここがずれると効果が激減する。
  • 順序効果:直前に置いた例ほど結果に影響しやすい。一番効かせたい型は後ろに置く。

03例は何個が適切か

「多ければ多いほど良い」ではありません。複数の検証で、0 個から 1〜2 個に増やしたときの精度向上が最も大きく、4〜5 個を超えると伸びは頭打ちになる傾向が報告されています。例を増やすほどプロンプトが長くなり、コストと遅延も増えるため、欲張らないのが実務的です。

0 1 2 3 5 10 例の数(shot 数) 大きく伸びる 頭打ち 精度

FIG.2 例を 1〜2 個入れた時点で効果の大半が出る。多すぎると伸びず、コストだけ増える

04Few-shot が特に効く場面

Few-shot は、言葉で説明しづらいものを「例で見せる」のが得意です。次のような場面で威力を発揮します。

独特な出力形式

決まった CSV や特殊な JSON など、文章で指示しづらい形を、サンプル 1〜2 個で正確に伝えられる。

固有の口調・トーン

自社のブランド口調、問い合わせ返信の丁寧さなど、「らしさ」を例文で再現させる。

NG例も含める

「こう答えてはダメ」という悪い例も入れると、避けてほしい答え方を具体的に学ばせられる。

05Chain-of-Thought:途中の考えを書かせる

Chain-of-Thought(CoT)は、答えだけをいきなり出させるのではなく、「段階的に考えてから答えて」と促す技法です。複数ステップの推論が必要な問題(文章題、論理パズル、条件分岐のある業務判断)で、正答率が大きく上がることが知られています。途中式を書かせることで、モデルが各ステップを丁寧に踏むようになるためです。

最もシンプルなのは、ひと言添える形です。

以下の問題を step by step で(順を追って)解いてください:
[問題]

もっと手綱を握りたいときは、考える順番を明示します。

以下の問題を解く際、次の順で考えてください:
1. 問題を理解する
2. 必要な情報を整理する
3. 計算手順を組み立てる
4. 各ステップを実行する
5. 最終的な答えを出す

問題: [...]

06Few-shot CoT:例にも「考え方」を入れる

Few-shot と CoT は組み合わせられます。例の中に答えだけでなく推論過程も書いておくと、モデルは「こういう手順で考えればいいのか」を型ごと真似します。これを Few-shot CoT と呼びます。

例題: 30 + 25 を 100 から引いた値は?
考え方: まず 30 + 25 = 55。次に 100 - 55 = 45。
答え: 45

問題: 17 + 23 を 80 から引いた値は?
考え方:

Few-shot は答えの「形」を、CoT は考えの「筋道」を渡す。両方渡せば、形も中身もそろう。

072026年の前提:推論モデルが普通になった

ここ数年で大きく変わったのが、推論(reasoning)モデルの普及です。GPT-5.x の Thinking モード、Claude Opus 4.x の Adaptive Thinking、Gemini 3.x の dynamic thinking などは、答える前に内部で考えをめぐらせる仕組みを最初から備えています。かつて主力だった OpenAI の o シリーズ(o1 / o3 / o4-mini)は世代交代で姿を消し、思考機能は新しい主力モデルへ統合されました。

こうしたモデルでは、次のことが起きています。

  • 「step by step」と書かなくても、必要に応じて自動で内部推論する。
  • 難しい問いには長く考え、簡単な問いには軽く済ませる(思考量を自動調整するモデルも増えた)。
  • 思考時間が増えるほど精度は上がりやすいが、その分コストと待ち時間が増えるトレードオフがある。

A Common Pitfall

推論モデルに CoT を「重ねがけ」しない

推論モデルはすでに内部で考えています。そこへ「順を追って詳しく説明しながら考えて」と細かく指示を重ねると、かえって説明が冗長になり、ミスの入り込む余地が増えることが指摘されています。簡単なタスクほどこの逆効果が出やすく、最近は内部では推論させつつその過程は表に出させない運用も一般的になりました。

推論モデル単体 + 詳細なCoT指示 冗長化・ミスの余地 逆効果になりうる

FIG.3 すでに考えるモデルに細かい CoT を足すと、冗長化して精度を損なうことがある

08使い分けの早見表

どの技法を使うかは「タスクの性質」で決めます。迷ったら、まずは何も足さない Zero-shot で試し、足りない分だけ補うのが無駄がありません。

こういう状況ならこの技法
シンプルな分類・抽出・要約Zero-shot で十分
独特な出力形式・口調をそろえたいFew-shot
多段の論理・計算が必要CoT、または推論モデルに任せる
複雑な業務判断(形式+推論)Few-shot CoT
会話の口調を統一したいFew-shot で例文を見せる

09さらに進んだテクニック

CoT を土台に、精度や探索力を高める発展形があります。いずれも効果と引き換えにコストが増えるので、「必要なときだけ」が原則です。

01

Self-Consistency(自己一貫性)

同じ CoT で複数回(例:5回)答えを生成し、多数決で最終答えを決める。確率的なブレを平均化して安定させる代わりに、回数ぶんコストがかかる。

02

Tree of Thoughts(思考の木)

一本の思考経路だけでなく、複数の道筋を枝分かれさせて並行探索する。計画問題や探索的な課題に有効だが、計算量は大きい。

03

ReAct(Reasoning + Acting)

「Thought(考える)→ Action(道具を使う)→ Observation(結果を見る)」のループ。検索やツール実行と推論を交互に回す、AIエージェントの基本パターン。

10つまずきやすいポイント

  • 例を入れすぎる:10 個以上並べても精度はほぼ伸びず、コストと遅延だけ増える。1〜5 個に絞る。
  • 例と本番で形式が違う:Few-shot の効果が一気に落ちる代表的な失敗。出力形式を完全にそろえる。
  • 不要な CoT:入力から答えが直接出るような単純タスクに CoT を足すと、長くなるだけで精度は上がらず、むしろ誤りが混じることもある。
  • 推論モデルへの過剰指示:自動で考えるモデルに細かい思考手順を重ねると、冗長化して逆効果になりうる。まずは素直に問い、足りなければ補う。

11まとめ

Few-shot は出力の形式とトーンを固定し、Chain-of-Thought は多段の推論力を引き出す技法です。推論モデルが普及して「step by step」と毎回書く必要は薄れましたが、特殊なフォーマットや自社固有の文脈をそろえたい場面では Few-shot が引き続き有効です。まずは Zero-shot で試し、形式が崩れるなら例を足し、論理が必要なら考えさせる——この順で必要な分だけ重ねるのが、コストと精度のバランスの取れた進め方です。