Stable Diffusion は、画像生成 AI を自分の PC(ローカル)で動かせるのが最大の特徴です。Midjourney や ChatGPT の画像生成(GPT Image 2.0)のような「ブラウザに打ち込んで待つ」クラウド型と違い、モデルのデータを手元にダウンロードして自分の GPU で動かします。だから素材を外に送らずに済み、生成回数に応じた課金もなく、追加学習(LoRA など)で深くカスタマイズできます。一方で、相応の GPU と環境構築の手間が要る「玄人向け」でもあります。本ガイドは、2026年時点の正しいモデル・ライセンス・必要スペックを押さえながら、最初の一歩までを整理します。
FIG.1 クラウド型は処理を他社サーバーに任せる。ローカル型は手元の GPU で完結する
01そもそも何が違うのか
画像生成 AI には大きく二つの形があります。Midjourney や OpenAI の GPT Image 2.0(ChatGPT 内蔵の画像生成)は、文章を入力すると提供元のサーバーが計算して画像を返すクラウド型。手軽ですが、入力した内容は外部を通り、利用量に応じた課金やプランの制約があります。
Stable Diffusion はモデルそのもの(数 GB のファイル)を配布しているのが根本的な違いです。それを自分の PC に置いて自分の GPU で動かすので、ネットに何も送らず、何枚作っても追加料金がかかりません。代わりに、動かすための GPU と環境構築は自分で用意します。
| ローカル型(Stable Diffusion) | クラウド型(Midjourney / GPT Image) |
|---|---|
| 素材・プロンプトを外に出さない | 入力は提供元サーバーを通る |
| 生成し放題(電気代と GPU 償却のみ) | サブスクや回数・クレジット課金 |
| LoRA・拡張で深く作り込める | カスタマイズは提供元の機能の範囲 |
| 相応の GPU と環境構築が必要 | ブラウザだけですぐ使える |
02いま選べるモデルの全体像
「Stable Diffusion」は単一のソフトではなく、複数のモデルを抱えるシリーズ名です。現行の最上位は 2026年4月に発表された SD4(Base / Ultra)で、新しい DiT アーキテクチャを採用しています。用途と手元の GPU に合わせて版(バリアント)を選びます。
SD4 Ultra
4096×4096 のネイティブ解像度で出力でき、専用のテキストグリフ処理によって画像内の文字を鮮明に描けます。オープンウェイトで最前線の品質を狙う版です
SD4 Base
同じ世代の標準版。Ultra ほどの解像度は要らないが、現行世代の描画品質は欲しいという場合の基準になります
SD 3.5 Medium / Large
家庭用 GPU で動かすことを狙った版。Medium は約25億パラメータで、手元の GPU が控えめなときの現実的な入口です。
ここで大事なのは、いちばん新しい版が自分にとっての正解とは限らないという点です。最上位ほど必要な計算資源も大きく、手元の GPU で回らなければ意味がありません。まず動く版で1枚出し、必要になったら上の版へという順序が実務的です。さらに、Stability AI 以外が出した FLUX.1(Black Forest Labs)のような高品質モデルも同じローカル実行環境で動かせるため、選択肢は「Stable Diffusion 系」に閉じません。
FIG.2 「最新=最良」ではない。手元の VRAM で動く範囲から選ぶ
03必要な GPU と VRAM の目安
ローカル実行で最も重要なのは VRAM(GPU 内蔵メモリ)です。これがモデルの大きさに対して足りないと、そもそも動かないか極端に遅くなります。目安は次の通りですが、SD4 世代を狙う場合はとくに、配布元が示す必要 VRAM を導入前に確認してください(いずれも実装・最適化で変動します)。
- SD 3.5 Medium:Stability AI 公式で、フル性能には約 9.9GB(テキストエンコーダ別)。8GB 級でも、T5-XXL エンコーダを CPU メモリへ退避(オフロード)すれば動かせます。家庭用 GPU の現実的な入口。
- SD 3.5 Large:素のままだと約 18GB と重め。NVIDIA と協業した FP8 量子化版で約 11GB まで圧縮、さらに Q4 量子化なら品質を少し犠牲に 8GB へ詰め込めます。
- SD4(Base / Ultra):2026年4月に発表された現行世代。とくに Ultra は 4096×4096 のネイティブ出力を狙う設計のため要求が重く、導入前に配布元の要件を確認するのが前提になります。
ローカル実行の成否は、まず VRAM がモデルに足りているかで決まる。
GPU は NVIDIA(CUDA 対応)が圧倒的に動かしやすく、情報も多いです。Apple Silicon の Mac や AMD GPU でも動きますが、対応・速度面で工夫が要る場面があります。手持ちの GPU で重い場合は、まず Medium 系や量子化版から始めるのが堅実です。
04実行環境(WebUI)を選ぶ
モデルだけでは動かず、操作するための実行環境(インターフェース)が要ります。2026年時点で広く使われている代表格は次の三つ。どれも無料・オープンソースで、目的に合わせて選びます。
| ComfyUI | AUTOMATIC1111 / Forge |
|---|---|
| ノード(箱)をつなぐ方式。自由度が高い | フォーム入力中心で直感的 |
| SD4・FLUX など新しい大型モデルに強い | 拡張機能と日本語情報が豊富 |
| 低 VRAM でも工夫して動かしやすい | まず触ってみる入門に向く |
ざっくりした選び方は、まず気軽に試すなら AUTOMATIC1111 系(軽量化版の Forge を含む)か、初心者向けの Fooocus。新しい大型モデルを使いたい・細かく組みたいなら ComfyUIです。ComfyUI は低スペックでも大型モデルを回しやすく、近年は事実上の標準になりつつあります。SD4 のような現行世代の大型モデルを試すつもりなら、はじめから ComfyUI を選んでおくと躓きにくいでしょう。最初の1枚を出すまでは手軽な環境で慣れ、必要になったら乗り換えれば十分です。
05ライセンス:商用利用は「条件付きで OK」
「ローカルだから何でも自由」ではありません。使うモデルごとにライセンスを必ず確認します。現在配布されているオープンウェイト版は Stability AI Community License が基本で、SD4 世代を使うときは配布ページに示された条件を都度確認してください。要点は次の通りです(規約は更新されうるため、利用前に公式ライセンスで最新条件を確認してください)。
- 非商用は無料。研究を含め、個人・組織が無償で使えます。
- 商用も年間売上 100万ドル未満なら無料。スタートアップや個人クリエイターはこの範囲に収まることが多い。
- 年間売上 100万ドル以上の組織は別途エンタープライズライセンスが必要。
- 生成物(出力画像)の所有権は利用者に残ります。
注意したいのは、コミュニティが配布する派生モデルや LoRAは、それぞれ独自のライセンス(商用不可・クレジット必須など)を持つことです。ベースモデルが OK でも、組み合わせた派生が商用不可なら全体として使えません。使う部品すべての規約と学習元を確認するのが原則です。
Responsibility & Risk
「作れる」と「使ってよい」は別
生成 AI は技術的には何でも出力できてしまいますが、その画像を使ってよいかは別問題です。実在の人物そっくりの画像、既存キャラクターや著作物に酷似した出力、ブランドロゴの模倣などは、肖像権・著作権・商標の侵害になり得ます。ローカルで作っても責任は消えません。
FIG.3 出力できても、権利とライセンスの確認を通してから使う
実務では、商用利用するモデルのライセンス確認、実在の人物・既存著作物に寄せすぎない、用途に応じて出所や生成 AI 利用を明示する——この三点を習慣にすると安全です。
06始めるための4ステップ
自分の GPU を確認する
VRAM 容量を調べる。8GB なら SD 3.5 Medium や量子化版から。NVIDIA だと情報が多く躓きにくい。
実行環境を入れる
まず触るなら AUTOMATIC1111 / Forge か Fooocus、大型モデル狙いなら ComfyUI。インストール手順は各公式リポジトリに従う。
モデルを1つ落とす
公式配布元(Hugging Face など)から、GPU に合う版を選んでダウンロード。最初は軽い Medium 系が安全。
1枚出してから広げる
まず生成を成功させ、慣れたら LoRA や追加学習へ。部品を足すたびにライセンスを確認する癖をつける。
07使い分けのまとめ
Stable Diffusion は、プライバシー・無制限の生成・深いカスタマイズを、GPU と手間と引き換えに手に入れる選択肢です。手軽さを最優先するなら Midjourney や GPT Image 2.0 などのクラウド型が向きます。逆に、素材を外に出したくない・大量に生成したい・自分の画風に作り込みたいなら、ローカルの Stable Diffusion が強い。まずは手持ちの GPU で動く軽めのモデルを1枚出すところから始め、必要に応じて版や環境を広げていくのが、遠回りに見えて最短です。