Stable Diffusion は、画像生成 AI を自分の PC(ローカル)で動かせるのが最大の特徴です。Midjourney や DALL·E のような「ブラウザに打ち込んで待つ」クラウド型と違い、モデルのデータを手元にダウンロードして自分の GPU で動かします。だから素材を外に送らずに済み、生成回数に応じた課金もなく、追加学習(LoRA など)で深くカスタマイズできます。一方で、相応の GPU と環境構築の手間が要る「玄人向け」でもあります。本ガイドは、2026年時点の正しいモデル・ライセンス・必要スペックを押さえながら、最初の一歩までを整理します。
FIG.1 クラウド型は処理を他社サーバーに任せる。ローカル型は手元の GPU で完結する
01そもそも何が違うのか
画像生成 AI には大きく二つの形があります。Midjourney や OpenAI の DALL·E(ChatGPT 内蔵の画像生成)は、文章を入力すると提供元のサーバーが計算して画像を返すクラウド型。手軽ですが、入力した内容は外部を通り、利用量に応じた課金やプランの制約があります。
Stable Diffusion はモデルそのもの(数 GB のファイル)を配布しているのが根本的な違いです。それを自分の PC に置いて自分の GPU で動かすので、ネットに何も送らず、何枚作っても追加料金がかかりません。代わりに、動かすための GPU と環境構築は自分で用意します。
| ローカル型(Stable Diffusion) | クラウド型(Midjourney / DALL·E) |
|---|---|
| 素材・プロンプトを外に出さない | 入力は提供元サーバーを通る |
| 生成し放題(電気代と GPU 償却のみ) | サブスクや回数・クレジット課金 |
| LoRA・拡張で深く作り込める | カスタマイズは提供元の機能の範囲 |
| 相応の GPU と環境構築が必要 | ブラウザだけですぐ使える |
022026年に選べるモデルの全体像
「Stable Diffusion」は単一のソフトではなく、世代ごとに複数のモデルがあるシリーズ名です。現行の主力は2024年10月に公開された Stable Diffusion 3.5 で、用途に応じて版(バリアント)を選びます。古い世代も用途次第で現役です。
SD 3.5 Large
約81億パラメータの最上位。品質とプロンプト忠実度が高い反面、必要 VRAM が大きい。
SD 3.5 Medium
約25億パラメータ。「家庭用 GPU でそのまま動く」ことを狙った中量級。最初の選択肢にしやすい。
SD 3.5 Large Turbo
Large を蒸留した高速版。わずか4ステップで生成でき、試行錯誤が速い。
加えて、2023年公開の SDXL はいまも非常に人気があります。LoRA や fine-tune された派生モデルが膨大に蓄積され、コミュニティの作例・解説も豊富だからです。最新版が常に正解ではなく、欲しい画風の派生モデルがどの世代に多いかで選ぶのが実務的です。さらに、Stability AI 以外が出した FLUX.1(Black Forest Labs)のような高品質モデルも同じローカル実行環境で動かせるため、選択肢は「Stable Diffusion 系」に閉じません。
FIG.2 「最新=最良」ではない。欲しい画風の派生がどこに多いかで世代を選ぶ
03必要な GPU と VRAM の目安
ローカル実行で最も重要なのは VRAM(GPU 内蔵メモリ)です。これがモデルの大きさに対して足りないと、そもそも動かないか極端に遅くなります。2026年時点の目安は次の通り(いずれも実装・最適化で変動するので、導入時に公式・配布元の最新値を確認してください)。
- SD 3.5 Medium:Stability AI 公式で、フル性能には約 9.9GB(テキストエンコーダ別)。8GB 級でも、T5-XXL エンコーダを CPU メモリへ退避(オフロード)すれば動かせます。家庭用 GPU の現実的な入口。
- SD 3.5 Large:素のままだと約 18GB と重め。NVIDIA と協業した FP8 量子化版で約 11GB まで圧縮、さらに Q4 量子化なら品質を少し犠牲に 8GB へ詰め込めます。
- SDXL:8GB から運用可能、12GB あれば快適。派生モデルが多く、入門に向きます。
ローカル実行の成否は、まず VRAM がモデルに足りているかで決まる。
GPU は NVIDIA(CUDA 対応)が圧倒的に動かしやすく、情報も多いです。Apple Silicon の Mac や AMD GPU でも動きますが、対応・速度面で工夫が要る場面があります。手持ちの GPU で重い場合は、まず Medium や SDXL、量子化版から始めるのが堅実です。
04実行環境(WebUI)を選ぶ
モデルだけでは動かず、操作するための実行環境(インターフェース)が要ります。2026年時点で広く使われている代表格は次の三つ。どれも無料・オープンソースで、目的に合わせて選びます。
| ComfyUI | AUTOMATIC1111 / Forge |
|---|---|
| ノード(箱)をつなぐ方式。自由度が高い | フォーム入力中心で直感的 |
| SD 3.5・FLUX など新しい大型モデルに強い | 拡張機能と日本語情報が豊富 |
| 低 VRAM でも工夫して動かしやすい | まず触ってみる入門に向く |
ざっくりした選び方は、まず気軽に試すなら AUTOMATIC1111 系(軽量化版の Forge を含む)か、初心者向けの Fooocus。新しい大型モデルを使いたい・細かく組みたいなら ComfyUIです。ComfyUI は低スペックでも大型モデルを回しやすく、近年は事実上の標準になりつつあります。最初の1枚を出すまでは手軽な環境で慣れ、必要になったら乗り換えれば十分です。
05ライセンス:商用利用は「条件付きで OK」
「ローカルだから何でも自由」ではありません。使うモデルごとにライセンスを必ず確認します。Stable Diffusion 3.5 は Stability AI Community License で配布され、要点は次の通りです(規約は更新されうるため、利用前に公式ライセンスで最新条件を確認してください)。
- 非商用は無料。研究を含め、個人・組織が無償で使えます。
- 商用も年間売上 100万ドル未満なら無料。スタートアップや個人クリエイターはこの範囲に収まることが多い。
- 年間売上 100万ドル以上の組織は別途エンタープライズライセンスが必要。
- 生成物(出力画像)の所有権は利用者に残ります。
注意したいのは、コミュニティが配布する派生モデルや LoRAは、それぞれ独自のライセンス(商用不可・クレジット必須など)を持つことです。ベースモデルが OK でも、組み合わせた派生が商用不可なら全体として使えません。使う部品すべての規約と学習元を確認するのが原則です。
Responsibility & Risk
「作れる」と「使ってよい」は別
生成 AI は技術的には何でも出力できてしまいますが、その画像を使ってよいかは別問題です。実在の人物そっくりの画像、既存キャラクターや著作物に酷似した出力、ブランドロゴの模倣などは、肖像権・著作権・商標の侵害になり得ます。ローカルで作っても責任は消えません。
FIG.3 出力できても、権利とライセンスの確認を通してから使う
実務では、商用利用するモデルのライセンス確認、実在の人物・既存著作物に寄せすぎない、用途に応じて出所や生成 AI 利用を明示する——この三点を習慣にすると安全です。
06始めるための4ステップ
自分の GPU を確認する
VRAM 容量を調べる。8GB なら SD 3.5 Medium や SDXL、量子化版から。NVIDIA だと情報が多く躓きにくい。
実行環境を入れる
まず触るなら AUTOMATIC1111 / Forge か Fooocus、大型モデル狙いなら ComfyUI。インストール手順は各公式リポジトリに従う。
モデルを1つ落とす
公式配布元(Hugging Face など)から、GPU に合う版を選んでダウンロード。最初は軽い Medium か SDXL 系が安全。
1枚出してから広げる
まず生成を成功させ、慣れたら LoRA や追加学習へ。部品を足すたびにライセンスを確認する癖をつける。
07使い分けのまとめ
Stable Diffusion は、プライバシー・無制限の生成・深いカスタマイズを、GPU と手間と引き換えに手に入れる選択肢です。手軽さを最優先するなら Midjourney や DALL·E などのクラウド型が向きます。逆に、素材を外に出したくない・大量に生成したい・自分の画風に作り込みたいなら、ローカルの Stable Diffusion が強い。まずは手持ちの GPU で動く軽めのモデルを1枚出すところから始め、必要に応じて版や環境を広げていくのが、遠回りに見えて最短です。