企画書づくりで一番時間を食うのは、白紙からの立ち上げです。AI を使うコツは「丸ごと書かせる」ことではなく、構成(骨子)を一緒に組み立て、本文は自分の事実で埋め、最後に磨きをかけるという3段の分業にすること。AI が得意なのは構造化と言い回しの推敲で、数字や固有情報・最終判断は人間の担当です。この記事では、その流れを具体的なプロンプトと2026年時点のツールの使い方に沿って解説します。
FIG.1 AI は構成と推敲を、人は事実と判断を。役割を分けるほど速く正確になる
大事なのは順番です。いきなり「企画書を書いて」と頼むと、それらしいが中身の薄い、誰の状況にも合わない文章が出てきます。先に枠(章立て)を固め、そこへ自分の持っている材料を流し込み、最後に第三者の目で削る——この順なら、AI の速さと自分の知識の両方が活きます。
01ステップ1:構成(章立て)を一緒に作る
最初にやるのは本文ではなく骨子づくりです。「誰に・何を・どうしてほしいか」を渡すと、説得の順番に沿った章立てを提案してくれます。曖昧なお題ほど結果も曖昧になるので、読者と目的を具体的に書くのがコツです。
新規SaaSツールの社内導入を、情報システム部門の決裁者向けに提案したい。目的は予算承認を取ること。説得力のある企画書の章立てを、各章で「何を書くか・なぜ必要か」つきで提案して。一般的な雛形ではなく、この読者・目的に合わせて。
返ってきた章立てが自社に合わなければ、その場で直させます。「現状分析の前に課題の優先順位を入れて」「コスト章を投資対効果として組み直して」のように、対話で削ったり足したりして自分の型に寄せていきます。背景・課題・打ち手・効果・コスト・リスクといった定番の流れを土台に、案件ごとに調整するイメージです。
02ステップ2:本文ドラフト——材料は自分が渡す
骨子が固まったら、章ごとに本文化します。ここで絶対に外せないのが「中身は自分が持ち込む」こと。要点を箇条書きで渡し、それを文章に整えてもらうのが、最も速くて事故が少ないやり方です。
「打ち手」の章を書いて。要点は次の通り:①現行ツールAを月内に併用開始 ②既存データは手作業で移行(自動移行は次フェーズ)③管理者2名を先行トレーニング。この3点を、決裁者が読んで段取りが分かる文章に。事実はこの3点だけ。新しい施策や数字を勝手に足さないで。
「新しい数字や事実を足さないで」と明示するのが要点です。生成AIは空欄を埋めようとして、もっともらしい数値や事例を作ってしまうことがあります(ハルシネーション)。金額・導入実績・他社事例・統計などの具体情報は、必ず自分が一次情報から用意し、AI には文章化だけを任せましょう。
FIG.2 要点(人)→ 文章化(AI)→ 本文。固有情報は AI に生成させず人が差し込む
一章ずつ進めると、各章のトーンや粒度を揃えやすく、長文でも破綻しません。最近は編集画面を使う方法も便利です。ChatGPT の Canvas、Claude の Artifacts、Gemini の Canvas は、チャットの横に文書エディタを開き、気になった段落だけをその場で書き直せるのが利点。全文を作り直さずに「この段落だけもっと簡潔に」と直せるので、推敲が速くなります(出力は Word/PDF/Markdown で書き出せるものが多い)。
03ステップ3:ブラッシュアップ——第三者の目で削る
ドラフトができたら、AI を厳しいレビュアーとして使います。書き手は自分の文章の穴に気づきにくいもの。視点を変えた問いを投げると、決裁前に弱点をつぶせます。
反論を先回りする
「この企画書を読んだ決裁者が突っ込みそうな質問を10個挙げて。特に費用対効果とリスクの観点で」。出た質問に答える形で本文を補強する。
長さと密度を整える
「要点を保ったまま、この章を半分の長さに」「結論を冒頭1文で言い切る形に直して」。冗長さを削り、忙しい決裁者でも読める密度にする。
論理の弱点を指摘させる
「根拠が弱い箇所、論理が飛んでいる箇所を指摘して。ただし事実は足さず、指摘だけ」。指摘は受け取り、修正は自分の事実で行う。
AI に任せるのは論理と説得の構造。事実と最終判断は、最後まで自分が握る。
042026年のツール選び——どれで作るか
2026年時点では、主要チャットAIはどれも企画書づくりに十分使えます。得意分野が少しずつ違うので、用途で選ぶか、複数を併用するのが現実的です。多くの実務者は「1つに絞らず使い分け」をしています。
| 長文・推敲・整った文章を重視 | 下書きの速さ・幅広い作業を重視 |
|---|---|
| Claude(Opus 4.6 など)は長い文脈の読み込みと丁寧な日本語に強い | ChatGPT(GPT-5.4 など)は素早い下書きや形式変換、表計算連携に強い |
| RFP や過去案件をまとめて読ませ、整合の取れた提案にしたいとき | メール・議題・スライド下書きなど量と種類をこなしたいとき |
Google Workspace で文書を作るなら、Gemini(Gemini 3.1 Pro など)を Google ドキュメント上で使うと書き出しの手間が省けます。モデル名・性能・料金プランは頻繁に変わるので、最新の対応状況は各社の公式情報で確認してください。ここでの名前は2026年前半時点の一例です。
近年はファイルのアップロードに対応したツールが多く、提案依頼書(RFP)・過去の類似提案・顧客ブリーフを読み込ませてから章立てを作らせると、最初から的を射た骨子が得られます。長い文脈を扱えるモデルほど、複数資料の同時参照に向きます。
Before You Submit
提出前に必ず通す3つの関門
AI で速く作れるからこそ、出す前のチェックを習慣にします。ここを飛ばすと、速さがそのまま事故の速さになります。
FIG.3 裏取り → 機密マスキング → 自分の判断。この3つを通してから提出
事実の裏取り:AI が出した数値・事例・引用は、もっともらしくても誤りや捏造があり得ます。一次情報(自社データ・公式資料)で1つずつ確認してから残します。機密マスキング:社外秘情報・顧客名・個人情報を外部サービスに貼る前に、扱いが許されるかを確認し、必要なら伏せ字にします。社のルールやツールのデータ取り扱い方針を守ること。自分で最終判断:説得の構造づくりは AI に任せても、何を約束し何を出すかの判断は自分の責任です。
05よくある勘違い
- 「全部書かせれば速い」:丸投げは結局、修正に時間がかかります。骨子と要点を渡してから書かせるほうが、手戻りが少なく速い。
- 「AI が出した数字は使える」:根拠を示せない数値は使わない。出典を自分で確認できるものだけ残します。
- 「1つのツールで完結すべき」:下書きは速いツール、仕上げは整った文章が出るツール、と使い分けて構いません。
- 「機密も気にせず貼って良い」:外部サービスへの入力は社のルール次第。許可と取り扱い方針を必ず確認します。
06まとめ
企画書づくりで AI が効くのは、白紙からの立ち上げと推敲です。構成を一緒に組み、要点を自分で渡して本文化し、第三者の目で磨く——この3段の分業を守れば、速さと正確さを両立できます。論理と説得の構造は AI に、事実と最終判断は自分に。まずは次の企画書で「章立てを提案して」の一文から始めてみてください。