MCP(Model Context Protocol)入門:外部ツール連携

AI Navigate Original / 2026/3/24

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要点

  • MCPはClaudeと外部ツールをつなぐ共通プロトコルで、ファイル・GitHub・Slackなどを統一的に扱える
  • Claude Desktopでは設定ファイルに <code>mcpServers</code> を追加し、コマンド・引数・環境変数を登録して利用する
  • 初心者はFilesystemから始め、次にGitHub、Slackへ広げると理解しやすく安全
  • 実務では「ローカル資料の要約」「PRレビュー補助」「Slack議事録化」「複数ツール横断調査」が特に有効
  • 導入時は最小権限・トークン管理・情報源の明示を徹底し、検証しやすいプロンプト設計を行う

MCP(Model Context Protocol)は、AI に「外の世界」を触らせるための共通の差込口です。Slack を読む、社内データベースを検索する、GitHub の課題を更新する——そうしたツール連携を、AI ごと・ツールごとに作り直すのではなく、ひとつの規格でまとめる。「AI 版の USB-C」と呼ばれる理由はそこにあります。この記事では、MCP が何を解決するのか、用語、実際に試す手順、そして 2026 年に大きく変わった点までを、初めての人向けに具体的に整理します。

01MCP が解くのは「N×M の作り直し」問題

AI から外部ツールを使わせようとすると、従来は「AI の数 × ツールの数」だけ専用の繋ぎ込みが必要でした。Claude を Slack に繋ぐ実装、別の AI を Slack に繋ぐ実装、同じ AI を GitHub に繋ぐ実装……と、組み合わせの数だけ車輪を再発明していたわけです。

MCP の発想は単純です。ツール側に「MCP サーバー」を 1 つ用意すれば、MCP に対応した AI クライアントはどれも同じものを使える。Slack 用の MCP サーバーを作れば、Claude でも、ChatGPT でも、Cursor でも、同じサーバーを共有できます。N×M の掛け算が、N+M の足し算になる——これが MCP の核心です。

従来:個別に繋ぐ(N×M) AI-AAI-BAI-C SlackDBGitHub 9 本の専用配線 MCP:共通の差込口(N+M) AI-AAI-BAI-C MCP 規格 SlackDBGitHub 配線は 1 種類だけ

FIG.1 組み合わせごとの専用実装(左)を、共通プロトコル 1 枚(右)に置き換える

02登場人物:クライアント・サーバー・3 つの機能

MCP には「AI 側」と「ツール側」という 2 つの役者がいます。呼び名を押さえると、設定ファイルもドキュメントも一気に読めるようになります。

MCP クライアント(AI 側)MCP サーバー(ツール側)
Claude Desktop / Claude Code、Cursor、VS Code、ChatGPT などSlack、GitHub、PostgreSQL、社内 API などをラップした小さなプログラム
使えるツール一覧を取得し、AI に呼ばせる実際の操作(読む・書く・検索する)を提供する

サーバーが AI に渡せるものは、おおきく 3 種類に分かれます。この 3 つの区別が MCP 理解の土台です。

Resource(読む対象)

ファイル・テーブル・ドキュメントなど、AI が参照する読み取りデータ。

Tool(実行する関数)

投稿・検索・更新といった動作。副作用を伴うものはここ。

Prompt(定型の型)

再利用できるプロンプトテンプレート。よく使う依頼を部品化する。

ざっくり言えば、Resource は「見せる」、Tool は「やらせる」、Prompt は「型を渡す」。書き込みや外部送信を伴う操作はすべて Tool 側にある、と覚えておくと安全設計の議論がしやすくなります。

03つなぎ方は 2 通り:手元起動とリモート

MCP サーバーには、つなぎ方(トランスポート)が 2 系統あります。これは 2026 年時点で整理が進み、初学者がまず知るべき分岐点になりました。

stdio(手元で起動)Streamable HTTP(リモート)
自分の PC でサーバーを子プロセスとして起動。ローカルファイルや手元の開発に向くネット越しの URL に接続。チームで共有する SaaS 連携に向く
設定ファイルに commandargs を書くサーバーの URL を登録。認証は OAuth が主流

かつて使われていた HTTP+SSE 方式は廃止予定(deprecated)で、リモート接続は Streamable HTTP に一本化されつつあります。新しくリモートサーバーに繋ぐときは Streamable HTTP を前提にしておけば間違いありません。

AI クライアント Claude / Cursor 等 手元プロセス stdio 同じ PC 内 リモートサーバー Streamable HTTP ネット 認証は OAuth

FIG.2 手元で動かす stdio と、URL に繋ぐ Streamable HTTP(旧 SSE は廃止予定)

04Claude Desktop で最小構成を試す

いちばん手軽なのは、Claude Desktop に stdio 方式のサーバーを 1 つ足してみることです。手順は 3 ステップです。

01

設定ファイルを開く

Mac は ~/Library/Application Support/Claude/claude_desktop_config.json、Windows は %APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.json。無ければ新規作成します。

02

サーバーを書き足す

下の例のように mcpServers に追記。npx -y で公式サーバーをその場で取得・起動できます。

03

Claude Desktop を再起動

「このディレクトリのファイルを一覧して」のように、自然文で頼めば対応するツールが呼ばれます。

{
  "mcpServers": {
    "filesystem": {
      "command": "npx",
      "args": ["-y", "@modelcontextprotocol/server-filesystem", "/path/to/dir"]
    }
  }
}

まずは filesystem のように読み取り中心で副作用の小さいサーバーから始めるのが安全です。書き込み系(メッセージ投稿、課題更新など)は、挙動を理解してから足しましょう。アクセス範囲は、上の例の /path/to/dir のように必要なディレクトリだけに絞るのが鉄則です。

05どんなサーバーがあるか(2026 年の実態)

公式のリファレンスサーバーは、学習・検証用に絞り込まれています。現在維持されている代表は次のとおりです。

  • Filesystem:アクセス範囲を制御できるローカルファイル操作
  • Git:ローカル Git リポジトリの読み取り・検索・操作
  • Fetch:Web ページを取得して LLM 向けに変換
  • Memory:知識グラフ型の永続メモリ
  • Sequential Thinking:段階的な思考プロセスの補助
  • Time:時刻・タイムゾーン変換
  • Everything:Resource/Tool/Prompt を一通り試せる検証用サーバー

注意したいのは、初期に有名だった一部のサーバー(GitHub・Slack・PostgreSQL・ブラウザ操作など)は、公式リポジトリでは「アーカイブ済み」または提供元への移管が進んでいる点です。たとえば GitHub 連携は、現在はGitHub 社自身がメンテナンスする公式 MCP サーバー(リモート版を含む)を使うのが基本になりました。古い記事のパッケージ名をそのまま貼ると動かないことがあるので、導入時は各サービスの公式ドキュメントや MCP レジストリで最新の入手先を確認してください。

出回っている設定例は古いことがある。入手先は公式とレジストリで確認するのが今のお作法。

06MCP が得意なこと

標準化

一度書いた MCP サーバーを、複数の AI クライアントで使い回せる。

資格情報の隔離

API キーや権限はサーバー側に置き、AI には素のキーを直接渡さない設計にできる。

動的な発見

クライアントは接続時に「使えるツール一覧」を取得する。後から増やしても再配線不要。

もうひとつの利点は移行のしやすさです。AI クライアントを乗り換えても、MCP サーバー側の資産はそのまま再利用できます。特定ツールに縛られにくい、というのが MCP の地味だが効く長所です。

Security & Operations

外の世界に触れる=リスクも一緒に入ってくる

MCP は便利な反面、AI に実行権を与える仕組みでもあります。導入前に必ず押さえたい注意点を、線画で整理します。

外部データ 悪意ある指示が混入? AI 判断 承認ゲート 最小権限 許可した操作のみ

FIG.3 外部データの指示を鵜呑みにさせず、重要操作は承認ゲートと最小権限で守る

  • プロンプトインジェクション:MCP 経由で読み込んだデータに悪意ある指示が紛れ込むと、AI がそれに従ってしまう恐れがある。外部由来の内容は「指示」ではなく「データ」として扱わせる設計を意識する。
  • 最小権限と承認:書き込み・削除・送金など影響の大きい操作は、AI に自動実行させず承認を挟む。サーバーに渡す権限も必要最小限に。
  • 運用と監視:MCP サーバーが落ちると連携が止まる。複数サーバーを呼ぶとレイテンシも増える。死活監視とログを前提に組む。
  • ハルシネーション対策:取得した情報を AI が誤って要約・断定することがある。重要な判断は一次情報で裏取りする。

072026 年に起きた大きな変化

MCP はこの 1〜2 年で「Anthropic 発の便利機能」から「業界共通のインフラ」へと位置づけが変わりました。初学者ほど、最新の前提を押さえておく価値があります。

  • 中立な標準へ:2025 年末、MCP は Linux Foundation 傘下の Agentic AI Foundation に寄贈されました。特定ベンダーの資産ではなく、オープンな標準として運営されています。
  • 採用の広がり:Claude だけでなく、OpenAI(ChatGPT)や主要な開発ツールが MCP に対応。「どの AI でも同じサーバーを使える」という当初の狙いが現実になりました。
  • リモート+認証の整備:Streamable HTTP と OAuth ベースの認可が整い、社内向けのリモート MCP サーバーを実運用しやすくなりました。
  • エコシステムの規模:公開されている MCP サーバーは各種レジストリ合計で1 万件超。公式レジストリの登録数だけでも 2026 年半ばで約 1 万件規模に達しています。

数字や仕様は更新が速い領域です。本記事の数値も「2026 年時点のおおよその規模感」として読み、導入判断のときは公式情報で最新を確認してください。

2026年7月6日、MCP に企業向けの新機能「Enterprise-Managed Authorization (EMA) Extension」が安定版として利用可能になったと発表されました(Publickey)。本記事 03 章の「リモート接続の認証は OAuth が主流」を一段進めるもので、社内で複数の MCP サーバー・複数の AI クライアントを運用する組織向けに、アクセス権限を組織単位で一括管理・監査できるようになります。個々の従業員が個別に OAuth 認可するのではなく、IT 管理者が「どの MCP サーバーに、どのチームが、どのスコープでアクセスできるか」をポリシーとして集約できる形で、本記事の Band Dark「外の世界に触れる=リスクも一緒に入ってくる」で扱った最小権限・承認ゲート・監査ログを、社内 SaaS 管理と同じレベルの粒度で MCP にも適用できます。社内 MCP を本格展開する組織は、07 章の「エコシステム規模 1 万件超」の段階を、「まず数十個の MCP を EMA で一元管理する」という運用面から入るのが 2026 年後半の推奨アプローチになります。

08どこから始めるか

個人開発

Filesystem・Git など読み取り中心の公式サーバーで感覚を掴む。範囲を絞って小さく試す。

社内導入

社内 API を MCP 化すると、AI 経由で同じ操作を全社で共通化できる。認証・権限の設計を最初に。

製品組み込み

自社製品の API をリモート MCP サーバーにすれば、ユーザーの AI クライアントから直接呼べる。

関連ツールとして、サーバーをデバッグする MCP Inspector、TypeScript / Python の 公式 SDK、各サービスの公式 MCP レジストリが揃っています。次の記事「MCP サーバー開発入門」では、実際にサーバーを作る側を扱います。まずは公式サーバーを 1 つ繋いで、AI が外のツールを呼ぶ感覚を体験するところから始めましょう。