Claude の Projects(プロジェクト)は、よく使う資料・指示・前提を 1 か所にまとめておき、その文脈を踏まえた専門アシスタントとして Claude に使わせる機能です。毎回「うちの会社はこういう前提で…」と前置きを書く手間がなくなり、最初から本題に入れます。本記事では、2026 年時点の実際の仕様にもとづいて、作り方・使いこなし・注意点を初学者向けに整理します。
FIG.1 知識ベースと指示を 1 つの Project にまとめ、質問のたびに必要な箇所だけを参照させる
イメージとしては「専用の会議室に、よく使う資料一式と『この部屋ではこう振る舞って』というルールを貼っておく」感覚です。同じ Project の中で会話を重ねるほど、文脈がそろった状態でやり取りできます。なお ChatGPT には「Custom GPT」「Projects」、Gemini には「Gems」という似た機能がありますが、本記事は Claude の Projects に絞って解説します。
01どんな場面で効くのか
Projects が向くのは、毎回同じ前提・同じ資料・同じ口調を必要とする反復作業です。逆に、一回きりの単発の質問なら通常チャットで十分です。
社内ルールに沿わせる
マニュアルや規程を読ませ、「うちの場合は?」に根拠つきで答えさせる。
文体を固定する
自分や自社の文章サンプルを入れ、トーンを一定に保ったまま量産する。
資料を積み上げる
同じ案件の議事録・仕様・データを足していき、横断して参照させる。
共通点は「前提の共有コストが高い作業」。法律・医療・特定業界のように専門前提が多い領域ほど、毎回の説明を Project 側に肩代わりさせる効果が大きくなります。
023 つの部品でできている
Project の中身は、たった 3 つの部品に分けて考えると理解が早いです。どれか 1 つだけでも機能しますが、3 つそろうと「専門アシスタント」らしくなります。
| 部品 | 役割 |
|---|---|
| カスタム指示(システムプロンプト) | その Project で常に守らせるルール・役割・出力形式。 |
| 知識ベース(Project knowledge) | アップロードした資料。全チャットから参照される。 |
| チャット履歴 | その Project 内でのやり取り。整理して残せる。 |
知識ベースは Project 画面の右側にまとまっており、ここに置いたものはその Project 内のすべての会話で共通の文脈になります。ファイルは 1 ファイルあたり 30MB まで、形式は PDF・DOCX・CSV・TXT・HTML などに対応します。
03作り方(5 ステップ)
Project を新規作成する
Claude.ai の左サイドバーから新しい Project を作る。無料プランでも一定数(執筆時点で 5 個まで)作成でき、有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)では数の上限が緩み、知識ベースの自動拡張(RAG)も効きやすくなる。プランの内訳は頻繁に変わるため、最新の対応範囲は公式の料金・ヘルプページで確認すること。
名前と目的を決める
「営業提案 Project」「社内 IT ヘルプ」など、用途が一目で分かる名前にする。1 つの Project に詰め込みすぎず、目的ごとに分けるのがコツ。
カスタム指示を書く
その Project で常に守らせたいルールを書く。「丁寧に」より、役割・読者・形式まで具体的に指定すると安定する。
知識ベースに資料を入れる
目的に直結する資料だけをアップロード。多ければ良いわけではなく、関係ない資料はノイズになる。
会話を始める
普通のチャットと同じく質問するだけ。Claude は知識ベースを参照しつつ、カスタム指示のルールを守って答える。
ステップ 03 のカスタム指示は、たとえば次のように「役割・対象読者・禁止事項・出力形式」をまとめて書きます。
カスタム指示の例
あなたは当社の営業支援アシスタントです。読者は中小製造業の経営層。専門用語は最小限にし、丁寧な敬語で答えてください。価格に触れるときは必ず「税抜」と明記すること。知識ベースに根拠がない事柄は推測せず、「確認します」と返してください。回答は「結論 → 根拠 3 点」の順でまとめてください。
04知識ベースの容量と RAG のしくみ
Project の知識ベースには「200K トークン(およそ 500 ページ相当)のコンテキスト枠」という目安があります。ここで多くの人がつまずくのが、「資料で枠を埋め尽くすと、肝心の会話を入れる余地が減る」という点です。
これを補うのが RAG(検索拡張生成)です。知識ベースが枠の上限に近づくと、有料プランでは Claude が自動的に RAG モードへ切り替え、質問ごとに関連する箇所だけを取り出して渡すようになります。これにより、実質的に扱える資料量が大きく広がります(公式の説明では最大 10 倍程度の拡張)。
FIG.2 RAG モードでは、資料全体ではなく質問に関連する箇所だけを抜き出して Claude に渡す
実務的な意味は明快です。無関係な資料を大量に入れると、関連箇所を取り出す精度が落ちるので、目的に直結する資料に絞るほど回答も安定します。容量に余裕があっても「全部入れる」より「効くものだけ入れる」ほうが結果は良くなります。
05使いこなしの 3 つのコツ
Project の品質は、資料の量ではなく「指示の具体性」と「知識ベースの絞り込み」で決まる。
- 知識ベースはコンパクトに。目的に直結する資料だけを入れる。関連の薄い資料は別 Project に分ける。
- 指示は形まで指定する。「丁寧に」ではなく「敬語・200 字以内・結論先・根拠 3 点」のように出力の型を決める。
- 定期的にメンテナンスする。古い議事録や旧版の資料は削除し、最新版に差し替える。Project は作って終わりではなく「育てる」もの。
06外部ツールとつなぐ(コネクタ・MCP)
2026 年時点の Claude では、Project にファイルを置くだけでなく、コネクタで外部サービスと接続できます。Google Workspace や Microsoft 365 などの公式コネクタに加え、MCP(Model Context Protocol)という公開規格を介して、社内データベースや独自ツールを Claude から参照させることも可能です。
MCP は特定ベンダーに縛られないオープンな規格である点が特徴で、同じ MCP サーバーを別の対応ツールからも使い回せます。ただし外部接続を使うときは、後述のとおり最小権限・重要操作は承認制を徹底してください。接続範囲が広がるほど、見えてはいけない情報まで参照させてしまう事故のリスクも上がります。
07セキュリティと「学習に使われるか」
社内資料を扱う以上、最初に押さえたいのが「入れた情報がどう扱われるか」です。ここはプランによって扱いが異なり、かつ方針は変わりうるので、必ず最新の公式ポリシーで確認してください。2026 年時点のおおまかな整理は次の通りです。
| 個人向け(Free / Pro / Max) | 組織向け(Team / Enterprise) |
|---|---|
| 会話データがモデル改善に使われる場合があり、設定でオプトアウト(拒否)できる。 | 契約上、データはモデル学習に使われない。 |
| 機密情報を入れる前にプライバシー設定と社内ルールを要確認。 | 監査ログ・権限管理など統制機能が利用できる。 |
運用面では次の点を守ると安全です。
- 機密の取り込みは社内ルールに従う。個人向けプランで未オプトアウトのまま機密を入れない。
- 共有メンバーを定期点検する。Project を共有している場合、離任者はメンバーから外す。
- 生成物は鵜呑みにしない。AI は事実と異なる内容を自信ありげに述べること(ハルシネーション)があるため、重要な数値・判断は一次情報で裏取りする。
Compare
他社の似た機能との違い
「Project を作る」という発想自体は各社にあります。どれが優れているというより、自分が普段使っているエコシステムと用途で選ぶのが現実的です。ざっくりした住み分けは次の通りです。
FIG.3 得意分野で選ぶ:資料・長文なら Projects、配布や API なら Custom GPT、Google 中心なら Gems
Claude Projects は長文・ドキュメント中心の用途に強く、MCP で幅広く連携できるのが持ち味。ChatGPT Custom GPT は作った GPT を公開・配布でき、Actions による API 連携の自由度が高い。Gemini Gems は Google Workspace との結びつきが強く、Drive 上のファイル更新が即反映される点が便利です。いずれも仕様の更新が速いので、最終判断は各社の最新情報で確かめてください。
08つまずきやすい点と対処
- 回答がぼやける:指示が抽象的/資料を入れすぎ → 役割と出力形式を具体化し、知識ベースを目的に直結する資料へ絞る。
- 関係ない資料を引いてくる:1 つの Project に複数目的が混在 → 目的ごとに Project を分ける。
- 古い情報を答える:旧版の資料が残っている → 知識ベースを最新版へ差し替え、不要ファイルを削除する。
- 機密が心配:個人向けプランで未オプトアウト → プライバシー設定を確認し、組織利用なら Team / Enterprise を検討する。
09まとめ
Projects は「前提の共有コスト」をまるごと肩代わりさせる仕組みです。カスタム指示で振る舞いを固定し、知識ベースで根拠を与える——この 2 つを目的ごとに絞って整えるだけで、汎用チャットが「自分専用の専門アシスタント」に変わります。まずは反復作業を 1 つ選び、関連資料を数本入れて小さく作り始め、使いながら指示と資料を育てていきましょう。
次の記事「Custom GPT / GPTs Builder」と合わせて読むと、AI を「自分専用」に仕立てる方法を各社横断で整理できます。



